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結城さんがTwitterで行っていた「添削」を解説してもらえませんか?(Q&A)

※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです(結城メルマガVol.041より)

「Q&A」のコーナーです。このコーナーでは購読者さんからいただいた質問に結城が回答しています。いただいた質問は結城が編集する場合があります。また、複数人からの質問を混ぜて一つの質問にする場合もあります。どうぞご了承ください。

●質問

結城先生のメルマガを楽しみに読んでいます。

結城先生のTwitterを見ていたら、ある方(学生さん?)の文章を添削なさっていて、おもしろいと思いました。あの添削について詳しく書いていただけないでしょうか。

●解答

応援ありがとうございます。

よくご覧になっていますね。 @siritori さんが文章を推敲している途中のつぶやきを結城が勝手に添削したものです。

◆元の文章
https://twitter.com/siritori/status/284152271615438848

車輪の再発明は機能だけではありません。設計にも車輪の再発明は存在します。頻発する設計パターンや機能をひとまとめに用意したものを『フレームワーク』と呼びます。
◆結城が添削した結果
https://twitter.com/hyuki/status/284161612611477504

車輪の再発明は、機能に対してだけではなく、設計に対してもあります。フレームワークには、あなたが車輪の再発明をせずにすむように、よく使われる機能や設計がまとめられています。(添削例)

最初にお断りしておくと、結城の「添削」はあくまでひとつの例であって、こう直さなくてはいけないというわけではありません。文章を添削する場合、前後の文脈を考えないと直しにくいので、一つのツイートだけだと形式的部分だけの修正になります。また、技術的な内容についても確認はしていません。

以下、なぜこのように添削したかを説明します。

●定義か性質か

まず、元の文章の最重要キーワードは「フレームワーク」です。「フレームワークと呼びます」と書いてありますので、この文章はフレームワークの「定義」か、フレームワークの「性質」について述べたいのだと思いました。

結城は「性質」であると(勝手に)解釈して文章を組み直しました。なので、

 〜を『フレームワーク』と呼びます。

という表現を、

 フレームワークには、〜

という表現に変えました。

●『 』と「 」

元の文章では『フレームワーク』のように二重カギカッコ『 』が使われていましたが、多くの場合『 』は書名に対して使うものなので、もしも使うなら「 」のほうがよいと思います。結城はここはフレームワークの性質について述べたものであるとするなら、これよりも前に定義があるだろうから、ここではことさらに「 」をつける必要はないと考えました。

●キーワードの順序

元の文章に出てくる他のキーワードは「機能」と「設計」です。ところが、文章中で順序が逆転していることに気がつきます。元の文章で

 …機能だけではありません。設計にも…

と書かれた直後に

 …設計パターンや機能を…

と書かれていますね。この順序はどちらかに合わせた方がいいと思いました。

●用語の吟味

それから「設計」という用語「設計パターン」という用語が出てきます。これは、どちらかに合わせた方がよいと思いました。

「頻発する設計パターン」は「設計」にして、「よく使われる機能や設計」のようにまとめました。

技術的な観点から考えると「機能と設計」を併置するのは妥当か、という問題もあるのですが、ここでは保留しました。

●さらなる改善へ

結城が添削した結果も、まだこなれていません。たとえば、

 車輪の再発明は、機能に対してだけではなく、設計に対してもあります。

の部分は、あまりよい文ではありません。以下のようにさまざまな書き方ができますね。

 ・車輪の再発明というものは、機能だけではなく設計に対してもあります。
 ・車輪の再発明は、機能に限らず設計に対してもあります。

「〜に対してもあります」というのはどうもうまくありません。

 ・機能に限らず設計に対しても、車輪の再発明はあります。
 ・「車輪の再発明」は機能と設計の両方に存在します。
 ・機能にも、設計にも、車輪の再発明は存在します。
 ・機能にも、設計にも、車輪の再発明というものが存在します。

そもそも「車輪の再発明」という表現を生かすべきかどうかというのも判断が必要になります。ただし、これ以上踏み込んだ添削は前後関係(文脈)をみないと難しいですね。

自分が考えている内容を文章として表現するのはとても楽しいことですが、相手に伝わるように書くのは難しいものですね。

ところで結城は、正確で読みやすい文章を書くための本を出版しています。『数学文章作法』という本です。タイトルに「数学」という名前を冠していますが、説明文を書く人ならどなたにも参考になる内容になると思います。よろしければご覧ください。

『数学文章作法 基礎編』
http://mw1.textfile.org/
『数学文章作法 推敲編』
http://mw2.textfile.org/

ご質問、ありがとうございました!

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※以降に文章はありません。「投げ銭」感謝。

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結城浩

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本を書いています。『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など。https://link.hyuki.net/mm でメルマガ配信中。https://link.hyuki.net/girlnote でcakes連載中。2014年度日本数学会出版賞受賞。

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コメント (1)
定義、用語を厳密に使う、というのは数学ガールでも何度も提唱されていましたね。数学的な記述だけではなく文学的な記述にも共通するという事ですよね。
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