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新しいことへのトライと子育て(Q&A)

※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです(結城メルマガVol.052より)

こんにちは、結城浩です。

「Q&A」のコーナーでは「結城メルマガ」の購読者さんからいただいた質問に結城が回答しています。いただいた質問は結城が編集する場合があります。また、複数人からの質問を混ぜて一つの質問にする場合もあります。どうぞご了承ください。

●質問

いつもメルマガから刺激をいただいています。ありがとうございます。今日は、質問があり、メールしました。

結城先生は、Twitterのタグやネットサービスなど、新しいものを抵抗なく「試して」「体感して」いらっしゃるように思います。

幼い頃から、新しいことにトライしたりチャレンジすることはお好きでしたか?

私は子どもたちを育てる中で、「しちゃだめ」を言いすぎてしまって、子どもたちが何かをする時におそるおそる始めるようになったなぁと反省しています。

物事を始めるのはエネルギーのいることだと思うのですが、静止摩擦を振り切る工夫などあれば、是非、教えてください。

●回答

結城です。いつもご愛読ありがとうございます。

いま自分の子供時代を思い返してみると、新しいことにトライしたりチャレンジしたり…うーん…あまりそういうことに積極的な子供ではなかったように思いますね。どちらかといえば、新しいことにトライするよりは、同じことを繰り返す方が好きな子供だったと思います。

実はいまでもそうでして、同じような毎日、似たような毎日を過ごすことにぜんぜん抵抗がないです。基本的には昨日と同じ今日を過ごすのが好きです。

と、ここまで書いてきて自分で混乱してきました。

自分としては、同じ毎日を送るのが好きなんですが、ご質問にあるように「新しいものを抵抗なく試す」のも好きですねえ…あれ? 自分ってどうなってるんだろう?

(しばし考え中…)

どうも結城は、

 「この範囲なら何をやってもいい」

と区切られているのが好きみたいです。自分が自由に遊べる「砂場」のようなものですね。そしてその範囲ならどんどん新しいことを試すし、チャレンジもする。でもその範囲を越えそうになると、急に引っ込み思案になる。そんなような気がします(って、それは誰でもそうか…)。

話を戻しますと、結城はずいぶん長いことネット活動をしているので、新しいサービスを試すことにはぜんぜん抵抗がありません。新しいサービスを試してみて、自分に合わなかったら放置すればいいやというほどの軽い気持ちでいます。つまり、ネットでやっていることの大半が、先ほどお話しした「砂場」に含まれているのですね。

新しいサービスをどんどん試して、自分でしっくりくるようなものについては、継続して使ってみるという態度でいます。

 * * *

ご質問を読み返してみますと「試す」「試さない」という傾向と子育てとの関係も気になっておられるようですね。

実は「親が《言ったこと》で子供に及ぼす影響」というのは、親が心配するほどは大きくないんじゃないかも、と個人的に思っています。

 親が子供に「こうしなさい、ああしなさい」と言う。
 親が子供に「これはやっちゃだめ、あれはやっちゃだめ」と言う。

その影響はゼロ――とまではいいませんけれど、親が全責任を負うほどは大きくないんじゃないかなあ、と思っています。

たとえば、自分自身の子供時代と現在を比べて考えてみると、「親が言ったから自分はこうなった」と言える部分はそんなに大きくないような気がします。いかがですか。

うっ……いま、ちょっと恐いことに気づいてしまいました。

確かに「親が《言った》から自分はこうなった」と言える部分は小さい。でも「親が《やってたこと》と似てることを自分もやってる」という傾向はありますね(!)。

うう…。

よく家内から「あなたはお義父さんと歩き方がそっくり」と言われます。「そうかなあ」と私は返すのですが、自分でも確かにそう思います。なんだかいちばんしっくりくる歩き方は自分の父親の歩き方と似ている。

歩き方に限らない。「論の進め方」や「発想の傾向」や「言い訳の仕方」、そして質問にあったような「新しいものへの取り組む姿勢」など…。それらは《父親が言ったように》ではなく《父親がやっていたように》、自分もやっているように思います。

結城が先ほど「恐い」と書いたのは、子供に《自分が言うこと》ならばある程度コントロールはできるかもしれないけれど、《自分がやること》をコントロールすることは難しそうだなあと思ったからです。

よく「子供は親の背中を見て育つ」と言いますが、こういう知見は鋭いです。そして恐いです。

うう…。

 * * *

話をまた戻します。

新しい物事を始めるのは確かにエネルギーが必要かもしれません。「静止摩擦を振り切る工夫」かどうかはわかりませんが、あまり考えすぎないことだと思っています。

人間が予測できることというのはたかが知れていて、自分自身の能力についても、未来の状況についても、わからないことばかりです。そしてそれを本当に認めると、あまり先のことを考えすぎてもしょうがないとわかります。

「おもしろそうだ」と思ったら、ちょっとやってみる。おもしろかったら続ければいいし、つまらなかったら止めればいい。そのくらいの感覚でいいんじゃないでしょうか。

確かに、まじめに考えてみると、新しいことを始めるときの障害はいろいろありえます。失敗するのがイヤだとか、他の人に笑われたらどうしようとか、うまくいかなかったら時間やお金がかかるとか…。やらない理由はいくらでも思いつきます。それを追求すると「おくびょうな自分」や「他人から賢いと思われたい自分」という「闇の自分」がいかにも顔を出してきそうです。

もしもそういう自家中毒に陥る傾向があるならば(結城はそういう傾向があるのですが)、たまには考えるのをやめて、バカみたいにポンと始めて、ドスンと失敗するのもよいのかもしれません。

 * * *

結城メルマガを始めて約一年になるのですが(注:この文章は2013年3月26日にもともと書かれたものです)、一年前の作業ログを読み返してみるとなかなか楽しいです。つまり「メルマガを始めたらどうなるか」をあれこれ予測している一年前の自分がいるのですね。でもその予測はかなり外れている。

一年前に思っていたよりも、このメルマガの位置づけは私にとって重要なものになっています。定期的に文章を書き、定期的に読者さんにそれを届けるという行為が仕事のペースメーカーになってくれている。購読者さんのおかげですね。そして『数学文章作法 基礎編』を始めとする書籍との連携もできつつある。

一年前に考えていたよりもはるかに豊かな実を結んでいると思います。「メルマガ刊行は、おもしろそう」というところから思い切って一歩踏み出して、「よし、やってみるか」と行動に移してほんとうによかったなあと思っています。

何でもかんでもやってみればいいというものではないでしょうが、「まずはやってみる。うまくいかなかったらやめればいい」という軽い感覚も大事だと思っています。

そんな感じでだらだらと書いてしまいましたが、何かのお答えになっているでしょうか。

今後ともよろしくお願いいたします(^^)

 * * *

※Photo by webtreats.
https://www.flickr.com/photos/webtreatsetc/5972016444/

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結城浩

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結城浩です。はげまされるのはとってもうれしい!
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本を書いています。『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など。https://link.hyuki.net/mm でメルマガ配信中。https://link.hyuki.net/girlnote でcakes連載中。2014年度日本数学会出版賞受賞。

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