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先が見えないときどうすればいいのか(Q&A)

※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです(結城メルマガVol.023より)

こんにちは、結城浩です。

結城メルマガで行っている「Q&A」のコーナーです。

結城メルマガ読者の方からのご質問に、結城が自分なりにお返事をします。お気軽に質問をお送りください。いただいた質問は結城が編集する場合もあります。また複数の方の質問を混ぜ合わせる場合もありますのでご了承ください。

●質問

結城先生、異国の地にいても届いてくれるメールに感謝します。

今日はずっと考えごとをしていて、何かとても落ち着きません。「考えごと」は好きなのですが、今回はそれが多すぎて、先が見えてこないのです。

僕の頭の中では……今後のキャリアのこと(いまは学生です)、他国の人とのコミュニケーションのこと、アルバイトのこと、恋愛のこと……などが複雑に絡み合って困っています。

結城先生のお父さんのように「コツコツとやる」にしても何をやればいいのかわからなくて。

結城先生はこれまで壁にぶつかっても打破してきたと思うので、

 「先が見えないときどうすればいいのか」

という質問を送ってみます。

●回答

こんにちは。メールありがとうございます。

そうですね。異国の地にもメールはちゃんと届きますね。当たり前のようですが、よく考えると不思議なことです。

送信ボタンをポンと押すだけで、一連のテキストとそれに乗った思いが遠くの地まで届く。そんな現代に私たちは生きているんですね。

考えごとが多い。多すぎる……しかもそれらは互いに絡み合っている。確かにそのような状況だと「どうしたらいいんだろう?」と思ってしまいますね。

あなたは「結城先生はこれまで壁にぶつかっても打破してきたと思う」とおっしゃってくださいましたけれど、私はそれほど自信をもって「打破」してきたとは言えないように思います。

もちろん、いまこうやって文章をぱたぱた書いているので、壁に押しつぶされることはなかったのだと思いますけれど、「打破」というよりは「回避」「無視」「断念」と呼ぶことも多かったように思いますね。「緩和」とか「迂回」とかもあったかな。

海外でそれほど長期の生活はしたことがないので、他国の人とのコミュニケーションで悩む機会は多くはなかったと思います。でも、進路や恋愛や仕事については若い頃よく悩みました。

自分の若い頃を振り返って、いまにして思えば……ああすればよかった、こうすればよかった、と思うことはそれなりにありますが、ではその若い頃にそのようなアドバイスを聞いたらそれを実行できたかといわれると、そうとも言えないようです。

学生さん(特に理系の学生さん)は《評価関数》を作りたがる傾向があります。自分がそうだったからよくわかるのですが、明らかな無駄をしたがらない。あの道よりはこの道のほうがよい。なぜなら……という思考に走りがち。それが悪いというわけではないのですが、世の中や自分の判断がそれ「だけ」になってしまうのはまずいかも。

どこかにちょっと保留というか《遊びの部分》があったほうがいい。自分の判断そのものが、そもそも当てにならないこともあるよ、と思う部分があっていい。意外に成り行きでうまく行くかも、という楽観論もときには必要。大事なのは、自分の考えを先鋭化させすぎないことです。

自分が堕落したような、自分が変節したような、そんな自分を、ゆるしてあげることもときには必要です。

学生さん(特に理系の学生さん)でもうひとつありそうなのが《100%でなければいけない》と思いこむ傾向です。全体としてはまあまあ大筋うまく行っているのに、隅っこの細かいところが気になって気になって満足感が得られない。そして細かいところに力を注ぐあまりに、かんじんのところがおろそかになる。本末転倒。そういう誤りをおかしがちです。

も少し、プラクティカルな話をしましょうか。

先が見えず、複数のややこしい問題が絡み合っているときに必要なのは、《他者》です。自分がなんでも話せる話し相手。聞き役。あなたの話を傾聴してくれる相手。自分が健康なうちに、そのような人を見つけておくのはとても大切なことです。

IT関係の若い人からときどき悩みごとのお便りをいただきます。そのときに結城はよくこの「話し相手」を確保するようにとお勧めします。IT関係では、まじめな若い人が心を病むことが多い。厳しい納期、競争、短い睡眠時間、社内の人間関係…心を病む要素はたくさんあります。

でも、どんなときでも「話し相手」がいる人はかなり強いです。強いというか、適切に弱くなれるというか。

人生は、機械的な場合分けで片がつくものではありません。特に自分一人で考えて「こうしなきゃ。ああしなきゃ」と、はまりこむのはまずいです。

特に「未来」についての思考は、はまりやすいです。未来は誰にもわからない要素がたくさんあるからです。不安になったらいくらでも不安になる。悩む気になったらいくらでも悩めてしまう。未来を思考すると、そうなってしまいます。

ですから「話し相手」としての《他者》の存在が重要です。あなたの不安や、ごちゃごちゃした気持ちや、迷いや、ぐるぐるした思考をきちんと受け止めてくれる《他者》です。

あなたの話を聞くというのは「現在」に根ざした行為です。「いま」そして「ここ」で、あなたの気持ちを受け止めてくれる(少なくとも話を聞いてくれる)相手の存在が大事です。

結城は若い頃にたくさんの悩みごとに出会いましたが、その都度その都度、たくさんの人に助けられました。助けられたといっても、直接助けてくれたとは限らなくて、ただ、結城が話す話をじっと聞いてくれた方々がおりました。その方々にはとても感謝しています。

あなたのご質問「先が見えないときどうすればいいのか」について、私は直接答えることはできません。未来が見えないのは確かだし、複雑な(しかも不確定な)要因がたくさん絡みます。しかもそこに変化を引き起こす人間が関わるわけですからね。

未来を確定することはできませんけれど、でも、自分の考えを率直に話せる誰か、じっと聞いてくれる《他者》がいるなら、自分が大きく踏み外す危険性を減らし、ささやかながら意味のある一歩を踏み出す助けとなるのでは……と、そんなふうに思います。

ということで、ぜんぜんお答えにはなっていないのですが、以上とさせてください。

なお、上に書いたような気持ちもあって、結城は「ロバ耳」というサービスをしています。これは「王様の耳はロバの耳」という童話から名前を借りたもので、要するに「あなたのお話をじっとお聞きします」というサービスです。登録もいらず、料金も不要です。よろしければ、どうぞ。

 ◆ロバ耳
 http://www.hyuki.com/roba/

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※Photo by webtreats.
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結城浩です。うれしいなあ……感謝!(^^)
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書籍執筆者。著書に『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など。http://bit.ly/hyuki-mm にて「結城メルマガ」をnote配信中。https://bit.ly/girlnote にてcakes連載中。2014年度日本数学会出版賞受賞。
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