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偏差値は自分の将来にどれほど影響するのか(学ぶときの心がけ)

質問

大人は「偏差値なんてさほど関係ない」や「学歴がすべてではない」と言います。でも、自分が普段から可視化されている能力のほぼ唯一のものが偏差値であるのは事実です。そして、それが思うように伸びない自分に嫌気がさしています。

「偏差値なんてさほど関係ない」や「学歴がすべてではない」と言う人は、いったいどのようなことを根拠にそう言ってるのかがわかりません。そのため、自分に対する自信がどんどんなくなり暗い気持ちになります。

そもそも、偏差値とはその人の何を表すのでしょうか。

また、偏差値は自分の将来にどれほど影響してくるものなのでしょうか。

教えてくれると嬉しいです。

結城浩のメールマガジン 2019年3月12日 Vol.363 より

回答

ご質問ありがとうございます。

ここでいう「偏差値」というのは、日本で一般に言われている「学力偏差値」のことですね。ある試験を受けると自分の点数が出ます。そのとき「自分の点数」が「同じ試験を受けた人の点数分布」に対しておおよそどのあたりに位置するか、その大雑把な目安を得る数値といえます。

もしも点数が平均点に一致しているならば、偏差値は必ず50になります。突出して高い点数ならば偏差値が100を越えることもありますし、逆に突出して低い点数ならばマイナスになることもあります。

偏差値の定義と、その意味については『数学ガールの秘密ノート/やさしい統計』に書きましたのでぜひ読んでください。自分の点数と、平均点と、標準偏差という値の三つがわかれば、偏差値そのものは簡単に計算することができます。

偏差値は大ざっぱにいうと、その試験で他人に比べてどのくらい良い点が取れたかどうかという目安の一つになります。でも、偏差値だけで、試験結果のすべてがわかるわけではありません。

たとえば、二つの試験で自分が取った偏差値を比較するような場面では、受験した人々が同じかどうかを考慮しなければ無意味な比較になります。また、点数の分布がどうなっているかを考慮しなければ、偏差値だけで自分が上位何パーセントに位置しているかを正確に知ることはできません。偏差値の定義をよく理解しないと、人生の大事な判断を誤ることもあります。

偏差値はそのようなものです。ある人が試験でどれだけ点数が取れたかの目安となる情報を一つの数で表したものに過ぎません。その数値がどれほど「その人自身を表している」と見なすかは、考え方によって変わります。

「偏差値があなたの将来にどのように影響するか」は、あなたが将来どんな場所に身を置くかによって大きく変わると思います。

より正確にいうならば、偏差値が直接的に影響を与えるというよりは「偏差値をはじめとして無数に存在する受験の情報をどのように使って、自分の志望校選択に活かしていくか」が影響を与えるといえるでしょう。

大学選びが、いったいどのくらいあなたの人生に影響を与えるかは、あなたがどんな人生を送るかによって変わりますよね。たとえば「医者になりたい」となったら、必然的に医学部に入学するということは必要でしょう。ということは自分がどこかの医学部に合格するように勉強し、志望校を選ぶことになります。模擬試験の偏差値は、その際の情報の一つとなります。

ものすごく大雑把な話をすると「良い成績を取って偏差値を高くすれば、みんなが入りたがる有名な大学を突破できて、みんなが入りたがる会社に入れて、生涯年収を上げることが期待できるので、人生は幸せだ」と思う人がいるかもしれません。しかし、どう考えてもそれは、人生を単純化し過ぎているといえます。

逆に、大人が「偏差値なんてさほど関係がない」や「学歴がすべてではない」と言いたくなる気持ちもわかります。実際、社会に出てみて、自分がどういう大学を出たかよりも、それ以降の努力や勉強や人との出会いの方が重要であったと思う人は少なくないはずです。

その一方で、志望校で生涯の友人となる人に出会って豊かな人生を送ることができたり、偏差値を上げるべく努力したことが結果的に自分の能力をアップさせることになり、自分の活動を広げる役に立っているという人もいるでしょう。

結局のところ「偏差値」は人生にとってどれほど意味がある指標なのかはわかりません。しかしながら、多くの人にとって、何もないところで努力するのは難しく、一つの目安として機能しているものと理解しています。

成績が上がらないと気分が落ち込むのは当然です。しかし成績があなたのすべてではないのも当然です。あなたは一個の数値ではなく、一人の人間ですから。

勉強して学校の試験の点数を上げて良い大学に行くというのは、自分の人生を幸せにするための唯一完全な方法ではありません。しかし、多くの人にとっては一つの大事な道であるのは確かです。問題は「たとえ多くの人にとってそうだとしても、他ならぬ自分にとってはどうなんだろうか」に対する答えは誰も知らないところにあります。

 どうすれば私は幸せになれますか?

に対する正しい答えは誰も知らないのです。

大人になって振り返ると、あのとき偏差値で一喜一憂したのは意味なかったなあと思うことも多いでしょう。その場合「偏差値なんて大した意味はないよ」と言いたい気持ちになるでしょう。

でも「あの試験前に偏差値の意味をよく理解していたならば、こっちの大学じゃなくてあっちの大学を選んだかもしれない」のように後悔する人もいるでしょう。その場合「偏差値は馬鹿にできないぞ」と言いたい気持ちになるでしょう。

どちらが正しいかを断じることはできません。

あなたがどんな価値観を持ち、どんな人生を生きたいと願うかはわたしにはわかりません。おそらくあなた自身もまだわからないでしょう。人生を過ごしていくうちに「私はこのようなことに幸せを感じるのだ」と少しずつわかっていくのですから。

試験の成績や偏差値は大事ですし、高くしようとするのは悪いことではありません。でも成績や偏差値が悪いからといって、必要以上に劣等感を感じたり、自分を貶めたりするのは間違いです。それはとてももったいないことです。

人生は大変ダイナミックなもの。固定的に考えるのではなく、自分を大切にしていただきたいと願います。

あなたの人生が豊かなもので満たされるように祈っています。

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