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長しとも思ひぞはてぬ昔より逢ふ人からの秋の夜なれば

#凡河内躬恒 (おおしこうちのみつね) #古今和歌集 #636 #jtanka #恋

「秋の夜は長い」なんて決めつけることはできませんよ。昔から、逢う人によって長くも短くも感じられるのが秋の夜なんですから。

「とも」は「と」を和らげたり含みを持たせたりする連語で「……ということも」の意味。

「思ひぞはてぬ」は「思ひ+ぞ+はて+ぬ」。「思ひ」は動詞「思ふ」の連用形。「ぞ」は係助詞で「思ひはつ」の間に入った。「はて」は補助動詞「はつ」の連用形で「すっかり……してしまう」の意味。「ぬ」は否定の助動詞「ず」の連体形。「ぞ……ぬ」は係り結び。「思ひぞはてぬ」は「完全にそうだと思うことはできない」という意味。

「逢ふ人から」は「逢ふ+人+から」。「逢ふ」は動詞「逢ふ」の連体形。「人」は名詞。「から」は原因・理由を表す格助詞。「逢ふ人から」はここでは「逢う人によって(いっしょに過ごす夜の長さが変わる)」の意味。

「なれば」は「なれ+ば」。「なれ」はナリ活用で断定の助動詞「なり」の已然形。「已然形+ば」は順接確定条件。「なれば」は「……であるので」の意味。

「なり」はラ変活用で推定などを表す助動詞「なり」と区別する。「男もすなる日記」(男も書くとかいう日記)。

636番の歌の「秋の夜が長いなんて名ばかり」に対して「いやいや長いなんて決めつけられませんよ」という返歌のようにも読める。

ながしとも おもひぞはてぬ むかしより あふひとからの あきのよなれば
ながしとも おもいぞはてぬ むかしより あうひとからの あきのよなれば

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