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「数学的概念で遊ぶ」とはどういうことか(学ぶときの心がけ)

質問

結城先生はたびたび、数学を学ぶ上では数学的概念で遊ぶことが大事とおっしゃっています。でも、僕にはそれができていない気がします。

例を作ることはできますが、その数学的概念を使って遊ぶというところが想像できません。

具体的にそのような場面を示していただけないでしょうか。

よろしくお願いします。

結城浩のメールマガジン 2019年4月16日 Vol.368 より

回答

ご質問ありがとうございます。

私が書いた「数学ガール」シリーズ「数学ガールの秘密ノート」シリーズの物語中では、まさにその「数学的概念で遊ぶ」場面があちこちに描かれていると思います。

「数学的概念で遊ぶ」ということをややくどく表現し直すなら、

数学的概念を理解しようと試みるときに、心に生じる自然な疑問に答えようとしたり、心に浮かぶ興味のままに進んでみること。

のようになると思います。さらに、

数学的概念を知識として取り込むのに留まらず、一貫性や合理性を保った上で、その知識を別の場面に適用してみること。

も関連しそうですね。

あなたが質問文で書いていた「例を作る」というのは「数学的概念で遊ぶ」の典型的な姿です。「遊ぶ」ための第一ステップといえるかもしれません。例を一つだけ作って終わりにするのではなく、たくさん作りたいですね。もっとも簡単な例、もっとも複雑な例、直感的には当てはまらないように見えるが定義に照らし合わせると当てはまる例、当てはまりそうだけど当てはまらない例などなど。

《例示は理解の試金石》ですから、例をたくさん作ることで「自分が確かにその数学的概念を理解しているかどうか」を確かめていくのです。

たくさん例を作っていると、その数学的概念が持っている性質を予想し始めます。「もしかして、こういうことも成り立つのではないだろうか」のように。そういう予想に気付いたら、本当にそうかなと考えていきます。

私のお勧めの「遊び」は「似たもの探し」ですね。数学的概念の類似物を探し、どこがどんなふうに似ているかを考えるのです。たとえば『数学ガール』『数学ガールの秘密ノート/積分を見つめて』では、和を求めるシグマと積分を求めるインテグラルの類似点を考えて楽しみました。

その他の「遊び」として「おもしろいもの探し」もあります。これは自分の力量に合った楽しみ方ができるのでいいですよ。たとえばやさしいものでいうと数を1,2,3,4,...と100ぐらいまで書いて「何かおもしろいものが見つからないか」と探すのです。一つおきにマルをつけてみて何かわからないかな。数を一列に並べるのではなく、四角形に並べたらどうかな。何かおもしろい規則性はないかな。

「数学的概念で遊ぶ」例を見つけるには、やはり「数学ガール」や「数学ガールの秘密ノート」を読むのがいいかもしれません。そこには「数学的概念で遊ぶ」という実例だけではなく、その心意気も描かれているからです。

数学に限った話ではありませんが、学んだ数学的概念を知識として得て終わるのはもったいないことです。それを生きた知識とするために、ぜひ「遊ぶ」ことを心がけてみてください。

ご質問ありがとうございました。

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