創造性は誰にでもあるのか
結城浩のメールマガジン 2019年5月7日 Vol.371 より
質問
どんな人でも0から1を作り出す創造性はあると思いますか。あるとしたらどうやってトレーニングすれば良いと思われますか。
回答
ご質問ありがとうございます。
創造性は、ほとんどの人が潜在的には持っていると思います。ただし、自分には創造性など無関係と思っていたり、自分には創造性などないと思っていたり、創造性を発揮するのが恐いと感じていたりすることも多いでしょうけれど。
どうすれば創造性のトレーニングになるかはわかりません。ただ「自分が何かをやってみようとするときにブレーキを掛ける癖をやめる」方法は悪くないと思います。何かを思いついたり、これやったらどうなるかなと思ったりしたときに、ブレーキを掛けずに「実際にやってみる」ということです。
「やったらどうなるかなと思う→やってみる」という流れは、創造性を発揮するために絶対的に必要なことですよね。
「やったらどうなるかなと思う→まあいいか、やらなくても」という流れでは創造性の有無もわからないし、創造性のトレーニングも何もあったもんじゃありません。ブレーキを掛けないのは大事です。
ブレーキを掛けないというのは、創造性を発揮することにつながりやすいと思います。しかし、創造性を単に「発揮する」だけではなく、創造性を「発揮し続ける」となると、また別の態勢が必要かもしれません。
ところで、あなたの質問を読んでいると、本当に知りたいのは「どんな人でも創造性はあるのか」ではなくて「私にも創造性はあるのか」なのじゃないかな、と感じられました。
もしもそうだとしたら、「創造性」のような一般化した概念で考えるのではなく、もっと特化した概念で考えた方がいいですよ。
私に、絵は描けるだろうか。
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私に、自転車の絵は描けるだろうか。
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私に、目の前にある自転車の絵は描けるだろうか。
↓
私に、目の前にある自転車のこの角度から見た絵をこのスケッチブックに描けるだろうか。
そのようにどんどん特化、具体化して考えるのです。
そうすると「創造性の有無」といった大味な思考から「技法の習得」や「技術の向上」へ近づいていけます。
ご質問ありがとうございました。
質問主からの返信
創造性の質問をした者です。ぼんやりとした質問なのにお答えいただきありがとうございました。
ご推察の通り、この質問には「私は」という主語が付きます。最近、創作をかじってはみているのですが、自分のセンスや知識、才能の無さに耐えられなくなり、毎度作り上げることなく途中で手が止まってしまいます。結局自分はワナビにもなれないやつなのか、そもそも創造性って万人が持っているものなのかな思って質問をしてしまいました。
また「もっと特化した概念で考える」というお言葉もいただき、いつも、思考の癖で大きく考え過ぎて途方にくれていることもしばしばあるな、と気づきました。特化した概念で考えることは、自分の行動に目がついてしまうため、すぐにはできなさそうですが意識してみたいと思います。
文章が下手で申し訳ありません。とにかく今回はお答えいただきありがとうございました。
結城からの再回答
返信ありがとうございます。
返信でも、あなたの創作がどんな分野のものなのかは結局わかりませんでしたが、多くの場合「ある作品が優れているかどうか」というのは作り上げた後でないと評価できません。作り上げなければ作品は存在しないからです。自分に創造性(センス、知識、才能……)があるかどうかを判断するとしても、まずはたくさん作り上げることをお勧めします。
結局のところ、「自分の才能」に目を向けたとたん、「自分の作品」からは目が離れているのです。
結城メルマガのVol.365の中でも「何か」を成し遂げるという関連した話題を扱っていますので、よろしければ。
◆どうしたら「何か」を成し遂げられるのですかhttps://mm.hyuki.net/n/n4bf00954cd1d
がんばってくださいね!
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