環境が変わる不安に対処する(仕事の心がけ)
質問
結城先生へ。
新年度から、今まで住んでいたのとは別の「新しい場所」で働くことになりました。
自分ではそのことを不安だとは意識していませんでした。ところが、新しく住む場所の話題を目にしたときに「これから行くところだ!」と嬉しくなるより先に「なんでこんなところに…」といった反発を覚えてしまうことに気付いたのです。
これは「環境が変わる不安」から来た反発ではないかと思い至りました。移る先は、特に会社などで強制されたわけではありません。あくまで自分で決めたところなのにも関わらず、そんな気持ちになったのです。
頭では楽しみにしているつもりです。また、これから住む「新しい場所」のことを悪く思いたくはありません。しかし、自分の心がまだ追い付いていないのかもしれないと思っています。
結城先生はどう思われますか。
不安を和らげるアドバイスが何かあればお願いします。
回答
ご質問ありがとうございます。
環境が変わることに不安を感じるのは、まったく不思議なことではありませんね。いくら自分で決めた場所であっても、不安になっておかしくはないです。「新しい場所」には、自分の未知のことが待っているわけですから。それを不安に感じるのは当然ともいえます。
不安に対処する方法といっても特別なことは思いつきませんが、「もしも自分だったらどうするか」ということを少し書きたいと思います。
「新しい場所」で働くこと状況で不安な気持ちになるなら、私だったら、
という行動を取ると思います。箇条書きとしてどんどん書いていくのです。書くときには「これは楽しみなことだな」「これは気になることだな」のように、何か印を付けてもいいですね。
「自分が思っていることを箇条書きにする」というのは、自分の気持ちを心の中でこねまわすのではなく、とにかく外に出すということです。
箇条書きにしていくときには、可能な限り具体的に書くようにします。「新しい環境が不安である」というのは抽象的ですよね。そこで終わりにせず、「その新しい環境とは何か」を、いまわかる範囲でいいから書くのです。新しい環境というのは働く場所のことですか、それとも人間関係のことですか、それとも働く仕事内容のことでしょうか。
不安な部分だけではなく、楽しみにしている部分もあるでしょうから、それもきちんと書きましょう。できるだけ具体的に書くのがいいですね。新しい人との出会いがあるかもしれない、これまでは得られなかった経験ができるかもしれない、そういったことです。私はあなたの代わりに具体的に書くことはできませんけれど、あなたは書けますよね。その「新しい場所」を思い描き、できるだけ具体的に書きましょう。
もしかしたら同じ項目が「不安」と「楽しみ」の両方にまたがることもあるでしょう。たとえば、新しい人との出会いというのは、不安でもあり楽しみでもある。そういう場合があるでしょう。そのように両方にまたがっても構いません。矛盾した項目が出てきてもいいのです。あなたがそう感じるのであれば、それは書く価値があることです。
書いているうちに、何か「引っかかること」や妙に「気がかりなこと」が見つかる可能性もあります。そうしたらそれを深めるようにじっくりと書き進めても構いません。
このような箇条書きをもしも本気でやったなら、結構な分量になるでしょうね。でも、「もうこれ以上は書けない」というくらいまで書いてしまうと、不思議なほど気分が変わるはずです。少なくとも私の場合はそうです。
箇条書きで書くとき、何十個も同じことを書いたりはしません。せいぜい二度か三度くらい。でも、いったん書かなければ、心の中だけでは何度も何度も同じことを考えてしまいます。ですから、何か悩みそうなことがあったら、箇条書きにするというのはお勧めの行動です。
書き出してみると、自分のことをちょっぴり客観視できる点も大きいですね。途中で「謎解きモード」に入ることもあります。「自分は、ほんとうのところ、何を気に掛けているんだろうか」と自問するモードです。
頭では納得しているけれど、心では不安を感じる。そういうときは、自分の理性が気付いてないことに対して、自分の直感がアラームを発している状態かもしれません。そのアラームを強引に消すのではなく、注意深く取り扱ってあげることは大切だと思います。
なお、ここまで私は、あなたが健康であるという前提で書いてきました。もしも、あなたの感じる不安が非常に大きくて、生活に支障をきたすような場合には、他の方に相談することも検討してみてください。
ご質問ありがとうございました。
新しい環境が、あなたにとってよいものとなりますように。
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結城浩はメールマガジンを毎週発行しています。