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たった一つの心を抱えて

私たちは、内面を見ることができる心を一つだけ知っている。

すなわち、自分の心である。

どんな喜びも、どんな悲しみも、私たちは心を通して知る。
自分が持っているたった一つの心を通して。

人の喜びや、人の悲しみに共感するときでさえ、
私たちは自分の心を通している。

決して、相手の心を直接感じているわけではない。
たとえ、そう表現せずにはいられないときであっても。

その意味で、生は孤独である。
人はみな、たった一つの心を抱えて生きるしかないからだ。

しかし、だからこそ、人は共感できる。自分も相手も、
たった一つの心を抱えて生きていることには変わりがないからだ。

自分の身体のメンテナンスと同じように、
自分の心のメンテナンスも大切なことだ。
心は、一生お付き合いする大事なデバイスである。

秋風に吹かれて、そんなことをふと思った。


結城浩のメールマガジン 2015年10月20日 Vol.186 より

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