インタビュー記事の校正実例(文章を書く心がけ)
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結城が受けたインタビュー記事の「校正実例」をご紹介します。
●この書籍とインタビューについて
はじめに、結城がインタビューを受けた書籍について、簡単にご説明します。
科学者やIT起業家やエンジニアなど、各界のトップランナーを育てた知のセンターともいえる「図書館」。その図書館を、彼らはどのように利用してきたのか、これからの図書館に何を望むのかが語られるインタビュー。
……とのことです(以上、編集者からの情報を結城が要約)。
結城は出版社の一室でインタビューを受けました。そのときのやりとりは録音され、文字起こしと軽い編集を経た上で結城に送られてきました。
まだ書籍用の文章としてしっかり校正されているわけではありません。でもその作業に入る前にインタビューイー(結城)に読んでもらうのは、内容的に大きな問題がないかのチェックです。
このようにインタビューイーにチェックしてもらうのは、一般的なことだと思いますし、大切なプロセスです。口頭ではどうしても冗長になったり、事実関係で嘘を言ってしまうことがあるからです。文章としてチェックし、出版後にトラブルが起きないようにするのです。結城はいつも、チェックのプロセスがあることを確認して、インタビューを引き受けるように心がけています。
そして、結城は多くの場合、できるだけきっちり校正をします。つまり、単なるチェックというよりも「自分が書いた文章だと思われてもよい」くらいの真剣さで臨むようにしています。
それは《読者のことを考える》という立場からすれば当然です。私の名前がついた文章を読者が読むとき、読者は当然ながら「結城浩はこの文章と同じことを考えており、文章と同じように言った」と思うでしょう。後から結城が「いやいや、これはこの本の著者がまちがったんだよ」などと言い訳をすることはできません。ですから、自分の手にボールが渡っている間には、私の側での最善を尽くすように心がけているのです。
といっても、インタビューを収めた本であり、また、本の著者は結城ではありませんので、あまり勝手気ままに振る舞うことはできません。インタビューという形式をぶっちぎって、結城が自説を文章として開陳する場所ではありません。
結城はいわば、「あのインタビューの流れでありえたであろう、理想の対話」を心に思い描きながら修正を行うようにしているのです。
●以下の「校正」について
以下では、具体的に出版社から送られてきた文書に、結城が手書きで朱入れをしたものをお見せし、何をどう考えて修正したかというお話をします。
なお、以下に掲載しているのは、原稿の一部であり、個々の断片はあちこちからの抜粋です。つまり、文章が続けて読めるようにはなっておりませんのでご了承ください。
●まず、校正の指示で大切なこと
まず冒頭の「リード文」からたくさん朱入れをしてしまいました。この部分は結城の発言とは無関係で、著者の先生の領分です。でも、お会いした感触から「きっと怒られることはない」と判断し、好きなだけ朱入れを行いました(ただし、最終原稿で結城の朱がどうなるかはわかりません)。
基本的に校正の指示というのは、
のが最も大切なことです。書籍に対して読者がいるように、校正の指示に対しても読者がいます。それは「編集者」という読者です。校正の指示を行うときには、その《読者のことを考える》のが大事なのです。
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