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作者に賛辞を送るのをためらいがち(コミュニケーションのヒント)

質問

結城先生に質問です。

たとえば、ある作者さんがTwitterに公開している素晴らしいイラストを目にしたとき、その画像を拡大して細部に渡って目を通した後、「どの部分がどう好きだったか」や「気付いたこと」などを事細かにリプライしようと文字を打ち込み推敲を重ねた上で、全消ししてやめることがときどきあります(「いいね」と「リツイート」はしますが……)

かなり長くそのような行動を繰り返してきたので、理由を考えてみました。

その結果、

  • 自分の賛辞には価値が無いと思えてきてしまう、また、相手が自分の賛辞に価値を見出してくれるか不安になる

  • 的外れな感想を抱いてしまっていないか、また、本人が既に言及したことを無駄に繰り返していないか不安になる

  • そのイラストの作者が属している、あるいは形成しているコミュニティに対して自分の場違い感を感じてしまう

  • 自分がそのイラストの作者個人に近づこうとしているように見えて自己嫌悪に陥る

といったことが挙げられました。

自分にとってこの内容はイラストだけでなく、共感できるツイートの文章などにも当てはまります。

自分なんかが、しかも結城先生にこんな内容の質問を送っていいのかすらも不安です。

恐らく自分は必要のない不安を抱いて勝手に落ち込んでいるだけなのでしょう。

ただ、感動の賛辞を送ろうとして全て無かったことにするときのやりきれなさと、嫌~な疲労感は放置しておきたくはないので、この一連の感情への向き合い方など、結城先生のアドバイスがあればお聞きしたいです。

結城浩のメールマガジン 2021年10月5日 Vol.497 より

回答

ご質問ありがとうございます。

ていねいにご自身のお気持ちを書いてくださったので、内容はしっかりと伝わりました。あなたのお気持ちもよくわかります。

あなたのご質問の中に、あなたご自身の「回答」がありました。「恐らく自分は必要のない不安を抱いて勝手に落ち込んでいるだけ」という部分です。全部が全部そうとは思えませんけれど、確かにその傾向はありそうだと感じました。

あなたが「必要のない不安」を抱くのはなぜかを想像してみると、それは「自分の判断」や「自分の行動」に対して広い意味での「自信」が少ないのだと思います。自信というよりはむしろ「開き直り」や「これはこれでいいのだ」という感覚の方が近いかもしれませんけれど。

あなたの状況に対しての「アドバイス」というほどではありませんが「たとえば、こんなふうに考えてみては?」ということを書いてみますね。あなたがそれをしなくてはならないわけではありませんし、できなければまずいというのでもありません。あくまで「こんな考え方もあるよ」というお話です。

簡単に要点をまとめるなら、つぎのようになるでしょう。

  • 自分の感覚は自分の領域なので、それはそれでよし。

  • 相手の領域には足を踏み入れない。

  • 「常識」と「一般的な感覚」を大事に。

以下では詳しくお話しします。

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