好きなだけ時間をかけられたらどんな本を書くか(Q&A)
※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです(結城メルマガVol.178より)
こんにちは、結城浩です。
「結城メルマガ」読者さんからの質問に答えるコーナーです。
質問は、必ずしも読者さんからの文章そのままではありません。結城が編集したり、複数人の質問を一つにまとめたりする場合があります。ご了承ください。
●質問
結城先生のご活躍を、ややまぶしく感じつつ拝見している者です。
先生はプログラムの解説や暗号の本や数学ガールを書いておられますが、そういう方面とはまったく無関係な本をお書きになる予定はありますでしょうか。
生活のことがありましょうから、ご想像が困難かもしれませんが、好きなだけ時間を掛けて好きなことをしてよいとなりましたら、どのような本をお書きになりたいものでしょうか。
ご活躍を祈念しております。
●回答
応援ありがとうございます。
なるほど、と思いながらご質問を読みました。
確かに生活のことがありますから、定期的に本を書くことは結城にとって大事です。でも幸い、現在のところは多くの読者さんに支えられており、比較的自由に本を書く企画を考えることができるといえます。読者さんにはほんとうに感謝しています。
ですから、現在でも、ある程度「好きなだけ時間を掛けて好きなことをしてよい」状態といえるかもしれません。
結城が最初の本を出版したのが1993年でした。そこからはずっとプログラミング関連の本を書き、プログラミングと直接関係のない本を書いたのが2003年のこと。その本は『暗号技術入門』の第1版ですね。
要するに、最初の本が出てから《10年間》は、プログラミングの本だけを書いてきたことになります。
その後は2005年に『プログラマの数学』、2007年に『数学ガール』が刊行され……プログラミングと数学が混じったラインナップとなりました。
さて。
これまで結城が書いてきたものをぜんぶ忘れ、現在の予定もちょっとわきに置いて考えた場合、結城の心の中にはいくつかの「書きたい本」というものがなくはないです。
はっきりと見えていればすでに書き始めているので、まだぼんやりとした姿しか見えていないのですが……
一つは「長い物語」です。とても長い物語。読む人がその物語といっしょにずっと旅をするような、そんな物語を書いてみたいです。
イメージとして近いものに筒井康隆の『旅のラゴス』という物語があります。あれはそんなに長い物語ではないのですが、結城はこの物語がとても好きです。
ただ、イメージは近いのですが、実際に私が書きたい具体的な姿はぜんぜん違うものになるはずです。(何を言ってるかわからないですよね。私も、まだ、わかりません)
もう一つは「心の物語」です。心理学とかサスペンスとかそういうのではなく、心が動く、心についての、心を語る、心を鎮める、そんな物語です。
こちらも、具体的な姿はまだよくわかりません。
あ、でも、あえてたとえるなら、たんぽぽに似ているかも。
あくまで比喩にすぎませんが、
たんぽぽの綿毛の一つがふわっと浮かんで、風に乗って、思いがけず、ずっと遠くまで飛んでいく。
そんな物語を書いてみたいと思います。
生きてるうちに書けたらいいな。
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