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本を書いて生計を立てる(本を書く心がけ)

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2015年12月22日 Vol.195 より

Jeff Ullmanによる金儲け法

結城が原稿を書き始めた時代によく読んだ本の一つに『クヌース先生のドキュメント纂法(さんぽう)』がある。

原文は"Mathematical Writing"という。結城が書いた『数学文章作法(さくほう)』は、この本の結城バージョンであるといえる。

この『クヌース先生のドキュメント纂法』の第30章に「Jeff Ullmanによる金儲け法」というタイトルの章がある。このタイトルは一種の「釣り」なのだけれど、たいへん興味深い内容を含んでいる章だ。

この章では「書き手の生産性」について語られている。曰く、本一冊書くには千時間掛かる。曰く、コンピュータの本は40ドルくらいで、米国内では1500部売れるから……細かい数字まで現代に当てはめるのは無理があるけれど、要するに「筆者が一冊の本に掛けられる時間」と、「一冊の値段」と、「印税率」を考えて、「さてこれで生活できますか?」という話が書かれているのだ。Jeff Ullmanといえば、当時、コンピュータサイエンスでもっとも人気がある著者の一人である。

で、その結果。「だから弁護士かお医者になれと言ったでしょう?」という母親の声が聞こえる、というのが結論。つまり、本を書くというのは儲からないという意味だ。でもそこから、Ullman先生は、どうしたら少しでも儲かるか、という話を展開する。

具体的な数字は、時代が過ぎればあてはまらなくなるけれど、考え方は今でも同じである。著者が得るお金というのは、一冊の本を書くのに掛かる時間と、その本が旬を過ぎるまでに売れる冊数と、印税率から計算できる。

ある著者は、たくさんの冊数を書いて収入を上げようとする。別の著者は、印税率を上げて収入を上げようとする。中には「ネットで炎上」を起こして瞬間部数を増やす著者もいる。瞬間部数は考えず、長く売れる本を目指す著者もいる。どう考えるかは、著者のストラテジーすなわち戦略といえる。

結城浩の戦略

さて、そこで私の話になる。

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