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練習問題に解答つけたら、学生は丸暗記してしまうのでは?(Q&A)

※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです(結城メルマガVol.030より)

結城浩です。

みなさんからのご質問にお答えする「Q&A」のコーナーです。

質問は、必ずしも読者さんからの文章そのままではありません。結城が編集したり、複数人の質問を一つにまとめたりする場合があります。ご了承ください。

●質問

有機酸じゃなくて結城さんへ。

結城さんのメールマガジンを楽しく読んでいます。毎週おもしろいですよ。このごろは本の草稿(ですか?)が送られてくるので、どきどきしながら読んでいます。「数学文章作法」です。

先日送られてきた「問いと答え」も興味深く読みました。その中に、章末の問題に解答をつけなさいという内容が書かれていました。なるほどと思う反面、教師の身としては(わたくしは教師です)懸念することもあります。それは、解答がついていたら、それを読んでいる学生は解答を丸暗記して望むのではないかという懸念です。

たとえば試験で、丸暗記した答えを書かれると「正しい内容」であっても、「その学生が身につけた内容」ではないですよね。だから解答がない方がいいのじゃないかと思うのです。

簡単に著者に対して「解答をつけなさい」とは言いにくいです。なんだかすみません。そのあたりどうなんでしょうか。

●回答

こんにちは。有機です、じゃなくて結城です。

いつも結城メルマガのご愛読ありがとうございます。また、結城の「数学文章作法」に対してのご意見・ご質問もありがとうございます! とてもうれしいです。

何回かに分けてお送りしている「数学文章作法」メルマガ版は、うまくまとまれば、2013年に書籍として刊行する予定です。どうぞお楽しみに!

(付記:2013年に『数学文章作法 基礎編』として刊行しました http://www.hyuki.com/mw/ )

さて、ご質問の件です。

 「もしも解答がついていたら、丸暗記して試験に臨むのじゃないか

という懸念ですね。

これに似たご指摘は何人かの読者さんからいただきました。ただ、多くの方が「それほど単純じゃない、難しい」とおっしゃっていました。確かに難しいと思います。

ちょっと整理しましょうか。

 (1) 解答がついていたら、丸暗記する恐れがある。
  →これは望ましくない
 (2) 解答がついていたら、自分で答え合わせをして学べる。
  →これは望ましい。
 (3) 解答がついていなかったら、丸暗記はできない。
  →これは望ましい。
 (4) 解答がついていなかったら、自分の頭でしっかり考える。
  →これは望ましい。

以上の(1)〜(4)は理屈上はその通りですよね。

でも、特に(3)と(4)の関係が微妙ですよね。

解答がついていない場合、丸暗記はできない。これは確かにそうです。丸暗記しようと思っても解答はないのですから。

でも、丸暗記で臨むような学生さんは、解答がついていないからといって、本当に自分の頭でしっかり考えるでしょうか? むしろ、何もしないのではないでしょうか? (このようなことを書いてくださった読者さんもいました)

ある読者さんからは、解答がついていない数学書の著者(先生)は、自習(独学)のことは考えていなくて、自分が持っている講座の期末試験で問題を使おうと思っているのではないか、というご指摘をいただきました。

それは確かに(先生の立場からは)納得がいきます。ちゃんと授業に出て、先生の話を聞いて、考えないと、期末試験でいい点は取れなくなるでしょうから。

でも…結城はちょっとそれ(先生の話を聞かないと点が取れないような本を書くこと)は違うんじゃないかなあと思うんです。それじゃ、先生があまりにも自分の都合しか考えていない。なので、結城が書く「数学文章作法」では、強く「章末問題には解答をつけて!」と訴えたいなあと思っています。

もしも先生が解答を作るのが大変なら、学生さんに作らせて、それを数学書にくっつけるのでもいいと思います。最悪でも、章末問題の出題ページに、「本の末尾を見ても、解答は載ってませんよ」という主旨のことは書いてほしいな、と思います。

何が正しい姿かはさておき、結城としては数学書の一読者として

 「章末問題には解答をつけてほしい!」

と思っています。

読者のことを考えてみますと、「解答をつけ *ない* でほしい!」と願っている読者さんはほとんどいないと思います(ですよね?)。

ごちゃごちゃ書きましたので、結城の考えをまとめておきます。

 ・読者の便宜を考えて、書籍に書かれる「問題」には基本的に「解答」があるべき。
 ・何かの都合で解答がない場合には、問題のところに「解答がない」ことを明記すべき。
 ・著者の都合ではなく、読者の便宜を第一に考えるべき。

結城はそのように考えています。もちろん、他の人に「強制」はできませんけれど。

ご質問、ありがとうございました。おかげさまで結城も補足説明を書くことができました。

また、どんなことでもお気軽にご質問ください。ありがとうございます!

 * * *

※Photo by webtreats.
https://www.flickr.com/photos/webtreatsetc/5972016444/

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結城浩

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本を書いています。『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など。https://link.hyuki.net/mm でメルマガ配信中。https://link.hyuki.net/girlnote でcakes連載中。2014年度日本数学会出版賞受賞。

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コメント (4)
個人的には解答があったほうがいいと思いますが、生徒の中には答えだけ覚えて試験に向かおうとする輩がいるのは事実です。選択肢方式だと特にそのまま解答の記号だけ覚えようとするヤツがいて、順番を変えずに記号を変える(ア・イ・ウをA・B・Cに)と「前のと違う!」と猛烈にクレームを入れてきた恥ずかしい生徒がいました・・・
練習問題についているのは、本質的には「解答」ではなく「解法」なんじゃないかな、と思ったりしました。「解答」が書いてあっても考えなければ「解法」は身につかないので、ちょっと問題を変えれば「解法」が理解出来たのかはちゃんとテスト出来そうな気がします。
答えだけが付いているような本や問題集もありますよね。良いものだと、その問題に至るまでの処で、必要な解法が全て詳らかになるように組んであったりします。つまり、そういった良いものの場合は、その問題の解法がそこに詳しく載っているわけではないけれども、其処までの内容がきっちり理解できていれば、答えだけあれば十分分かるようになっている。まぁ、「時間と手間」が必要ですけど、それを省くための解法の記載なら必要ないと思ったりもします。
「問題が解けなかった際に,その解法を学んで次に活かす」ということが,練習問題を解く一番の目的だと思っています.解答がない場合にはこのプロセスを行うことが難しいので,問題を解く意味が減ってしまうと思います.
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