小学校高学年におすすめの「数学ガール」は?/まとはずれな批判/情報の信頼性/いい質問/あとはやるだけなのに/
結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2020年3月3日 Vol.414
目次
・算数に興味を持っている小学校高学年におすすめする「数学ガール」シリーズ最初の一冊は?
・まとはずれな批判に対する批判 - コミュニケーションのヒント
・情報の信頼性を判断するには
・どうしたらいい質問ができるか - コミュニケーションのヒント
・あとはやるだけなのに一番大事なことができない - 学ぶときの心がけ
はじめに
結城浩です。
いつもご愛読ありがとうございます。
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新刊のアナウンスです!
「数学ガールの秘密ノート」シリーズの第13作目がアマゾンで予約開始になりました。今回のタイトルは、
『数学ガールの秘密ノート/複素数の広がり』
です。テーマは「複素数」。今回も楽しい数学読み物になりますよ!
◆『数学ガールの秘密ノート/複素数の広がり』(アマゾン)
2020年5月刊行予定です。ぜひ応援してくださいね!
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レジで気になる話。
雑貨屋さんで買い物をする。会計のためにレジに並ぶ。テーブルに、購入したいシャープペンやマーカーなどの細かい物品を並べ、レジの人が処理をするのを待つ。いくつかはラッピングしてもらう。
ところが。
会計の途中で、何度も商品がテーブルからころげ落ちそうになる。
その原因は、セロテープの台がレジの店員さんから見て左側にあることだ。右利きの店員さんが、商品を飛び越すように手を伸ばしてセロテープを切る。そのたびに手が商品に当たり、テーブルから落ちそうになる。その繰り返しだ。
「ねえ、そのセロテープ台は、こっち側に置いた方がいいですよ」
私はそう言いたくなるけれど、言いたくなるけれど、言いたくなるけれど……やっぱり言えない。なぜ言えないか。それほど顔見知りでもないのに、いささか差し出がましい物言いだからだ。
それから、何より、セロテープの台の位置に相当するくらいの改善点は、この店には他にもたくさんあるからだ。レジの裏にある包装紙がきれいに整理されていないとか。壁に貼られている連絡事項がいつのものかわからないとか。あるいはまた、お客さんが出したカードの処理を先にしないために、トータルの処理時間が長くなるとか。
というわけで、その雑貨屋さんで会計を待っている間は、いつも中空をぼんやり見るようにしています。
それで問題ありません。平和。
* * *
働ける環境の話。
ふと気づいたこと。私の祖父は、私の父が高校時代に亡くなった。祖父が亡くなった後、祖母が働いて家族を支えた。祖母が家庭を守り、時代が過ぎて、やがて私の父は結婚する。そして私が生まれた。ということは、祖母が働ける環境がなかったなら、私はそもそも存在しなかったかもしれない。
男性・女性に関わらない。働ける環境が整うことは社会と未来にとって非常に大切だ。当たり前のことだけど、改めて実感する。世が世なら、私はそもそも存在しなかったかもしれないのだ。
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では、今回の結城メルマガを始めましょう。
どうぞごゆっくりお読みください。
算数に興味を持っている小学校高学年におすすめする「数学ガール」シリーズ最初の一冊は?
質問
「数学ガール」のシリーズを「算数に興味を持っている小学校高学年」におすすめするとして、最初の一冊はどれがよいでしょうか。
回答
ご質問ありがとうございます。また、結城の本にご興味もってくださり感謝です!
一番薄くて、さっと読めるのは『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』になります。算数に興味を持っている小学校高学年ならば読めると思います。全部を理解できる必要はありません。親しむのが大事です。
◆『数学ガールの秘密ノート/式とグラフ』
もうちょっと「数遊び」みたいなものがいいなら、たとえば『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』もいいですね。
◆『数学ガールの秘密ノート/整数で遊ぼう』
「数学ガールの秘密ノート」シリーズは、以下のリンクで、すべての巻の第1章を無料ですぐに読めますので、各巻のようすを調べるための参考になりますよ。ご利用ください。
◆数学ガールの秘密ノート
「算数に興味を持っている小学生」で、もしも数学の啓蒙書などで数式に少し触れている方ならば、「数学ガールの秘密ノート」シリーズだけではなく、「数学ガール」シリーズに挑戦するのもアリかもしれません。でも、無理なさる必要はありません。
◆数学ガール
大事なのは、書籍の冒頭「あなたへ」にも書いた通り、よくわからなくても先に読み進んでいいという点ですね。ぜんぶ理解しなければならないと身構えたり、難しかったらどうしようと心配して読まない人がしばしばいらっしゃるからです。
こちらも合わせてどうぞ。
◆「数学ガール」って、どれから読めばいいの?
できる/できない、わかる/わからないを気にするよりも、まずは「ここにはおもしろいものがありそうだぞ」と思ってもらうことがとても大事です。算数や数学が好きになってもらえればうれしいです!
まとはずれな批判に対する批判 - コミュニケーションのヒント
質問
noteで公開されている「エゴサーチで傷つかない?」という文章を読ませていただきました。
◆「エゴサーチで傷つかない?(本を書く心がけ)」
私は物書きではなくエンジニアなので、「自分が執筆したもの」を「自分が開発してOSSとして公開しているもの」と読み替えつつ、より一般的な話として理解しました。
今の自分では達成できていないようなことを結城さんはできていらっしゃって、心の底から尊敬の念が湧きましたし、おこがましい話ですが「羨ましい」、「いつかはこういう人になってみたい」と思いました。
それと同時に一つ聞いてみたいことがありましたので質問させてください。
(以下引用)
内容的にまとはずれな批判が見つかることもあるでしょう。本を読まずに「きっとこういう内容だろうから、私は読まない」という種類の文章が見つかることすらあります。でも、そのような人を著者として批判することはできません。その人がそのように感じたのは事実だからです。
(引用ここまで)
本当にこの通りだと思いました。確かにその事実は否定のしようがなく、「著者として(開発者として)」その人を批判することはできないと気づけました。
一方で、「著者として(開発者として)」ではなく「ひとりの人間である私として」そのような人に批判の心を持つことも、また許されないことなのでしょうか。
「確かに私の作ったものをこう受け取る人も世の中にはいるんだ(これは事実として存在しているので受け入れる)。それでも私は、わざわざそういう短絡的な発言をするような人にはなりたくない」といった感情は持つべきではないのでしょうか。
結城さんのご意見を聞いてみたいです。
よろしくお願いします。
回答
ご質問ありがとうございます。
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