フリーランスとグライダー(仕事の心がけ)
フリーランスで一番うれしいことの一つは、今日一日の仕事を自分で決められる点です。
フリーランスで一番つらいことの一つは、今日一日の仕事を自分で決めなくてはいけない点です。
フリーランスで働く人は、今日一日の仕事を自分でデザインするのが基本です。何時にどこで仕事を開始し、何時に終了するかを自分ですべて決めます。もちろんその間にどんなことをするかも自分ですべて決めます。
それはうれしいことであり、同時につらいことでもあります。
会社勤めをしたことがない学生さんの中には素朴に、
と思う人もいるでしょう。会社勤めが長い人は、
と思うかもしれませんね。
フリーランスで仕事をするというのは、会社の社長も、同僚も、上司も、後輩も、自分ひとりで引き受けるようなものです。仕事をうまく進めていくために、すべてのロールをこなしていく。
単純に仕事をさぼりたくてフリーになる人はうまくいきません。私の知っているフリーランスの人は、平均的な会社員よりも有能で、勤勉で、元気ではないかと思っています。
会社を辞めてフリーランスで働き始めてうまくいっている人の多くは、会社にいたころよりも仕事をしているはず。会社を辞めてフリーランスになったのは、「仕事」をしたくないからではなく「自分の仕事」ができないからなのです。
結城は現在フリーランスで仕事をしています。つまり、特定の会社や組織に属さずに仕事をしています。そしてつくづく思うのは、
だということです。空を飛ぶグライダー。燃料はない。あるのはポテンシャルだけ。風を読み、方向を定め、進む。まさにフリーランスはグライダーのようなものです。
地上から見ているとグライダーは優雅に見えます。そして何も努力せずに自由に飛んでいるように見える。操縦する人は確かに自由です。いきなり落ちてしまうこともできるほどに自由です。
フリーランスの人は自分というグライダーを落とさないように注意する。常時考えて風を読み、与すべき人を見極めて方向を定め、進む。
フリーランスで生きていこうと思ったときに起きることは「すべて」です。通常なら会社がめんどうみてくれるところを、自分でめんどうみなければならない。
たとえば、会社には営業さんがいて、ものやサービスを売って稼いでくれる。フリーランスで生きるには、その役目を自分がやらなければならない。自分がやらないとしたら、やってくれる誰かを見つけなければならない。
あるいはまた、会社には経理の人がいて、お金を勘定したり、経費や税金を気にしたり、税務署とのやりとりをしてくれる。フリーランスで生きるには、その役目を自分がやらなければならない。自分がやらないとしたら、やってくれる誰かを見つけなければならない。
グライダーが進む向きを決める社長役も必要だし、総務役も必要になる。場合によっては人事や、広報や、それこそ、会社なら専任の人がいるような仕事を、フリーランスの人は自分でやらなければならない。
もちろん、大きな会社の経理や総務と同じ規模の活動をフリーランスの人がやる必要はない。自分の事業規模でかまわないけれど、自分で責任を持って活動しなければならない。
大ざっぱにいえば「フリーランスで継続的に生活できる人」の多くは、会社の中でも十分にやっていける人ではないかと思っている。例外はあるだろうけれど。
それではなぜ「会社でやっていける人」がフリーランスで働く人になる必要があるのか。万人に当てはまるかどうかはわからないけれど、我が身を振り返った場合には「自分で大多数のパラメータをコントロールしたい」という気持ちがあるのではないかと思います。
会社にいると、他の人と相談して意思決定を行う必要がある。会社という組織には組織の方針があるのだから、それに従って秩序立って動く必要がある。
でもフリーランスなら、そこは自由。自分がしばらく生活できるという前提があれば、何でも自由に選べる。自由に判断できる。「よし、いまからこのプロジェクトに全力投球!」もできるし、「ここ半年進めたけれど、このプロジェクトは今日をもって中止!」もできる。すべて、あなたの自由。
でもその代わり、誰もあなたを助けない。誰もあなたの責任を取らない。誰もあなたの代わりに顧客に謝りに行かない。 誰もあなたの代わりに別のプロジェクトで赤字の補填をしてくれない。そこが、会社に属することと、フリーランスで生きることとの大きな違いになる。
自己判断と自己責任。成功も失敗も総取りである。
グライダーの比喩は、かなり正確である。一人の判断で生き死にが決まる。ありえないほど遠くまで行けることもある。能力次第でどこまでも行けて、とても気持ちがいい。でも、一人による限界というものも確かにある。
フリーランスで働くのは、えらいことやすごいことではない。
これは「働き方」の一つの選択にすぎないのです。
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