学校の勉強が苦手なら「勉強が楽しい」という感覚を身につけるのは難しい?
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学校の勉強が苦手なら「勉強が楽しい」という感覚を身につけるのは難しい?

質問

結城さんに質問です。

「勉強が楽しい」という感覚は、自然に身につくものなのでしょうか。それとも何か特別な練習をしないと身につかないでしょうか。

たとえば、学校の勉強が苦手だと感じる場合には「勉強が楽しい」という感覚を身につけるのは難しいものでしょうか。

結城浩のメールマガジン 2019年1月29日 Vol.357 より

回答

ご質問ありがとうございます。

「勉強が楽しい」という感覚が、自然に身につくものかどうか、私には何ともいえません。

結城自身の体験に限った話でお話しします。私は現在「勉強は楽しい」という感覚を持っています。もちろん、どんな勉強でも楽しいというわけではありませんけれど、自分が行っている活動のうち一般には「勉強」と呼べるような領域(本を読んだり文章を書いたり計算したり)を楽しいと感じます。

もう少し精密に自分の感覚をなぞってみます。そうすると「勉強が楽しい」というのは自分の感覚の一部分を切り取った表現だと感じます。どういうことかというと「勉強が楽しい」という前に、次のような楽しさを感じているということです。

・自分が知らなかったことを知る楽しさ
・自分ができなかったことができるようになる楽しさ
・意味不明だったものの意味がわかるようになる楽しさ

そして勉強に伴う「めんどくさいこと」や「時間が掛かること」や「やっかいなこと」は、これらの楽しさのスパイスとして効いています。つまりやすやすと達成できることはつまらなく感じるということです。

そして「勉強が楽しい」というのは、上で話した楽しさのひとつのあらわれだと感じます。

あなたのご質問に戻ります。「学校の勉強」というのは「勉強のひとつ」ではありますけど、「勉強のすべて」ではないですね。そして学校の勉強が苦手という人はよくいます。しかも、学校の勉強は自分の気持ちに反する場合もよくあります。

・自分はこのことをもっと詳しく知りたいのに、次の話に進んでしまうのか……
・自分はもっとゆっくり学びたいのに、どうしてそんなに急ぐのか……
・テストされて他の人と点数を比較されなきゃいけないのか……
・好きな勉強だけじゃなくて、嫌いな勉強もしなくちゃいけないのか……

そのように、自分の「こうしたい」とぶつかるとき、なかなか「勉強の楽しさ」は味わいにくいですね。

「学校の勉強が楽しいか否か」と「学ぶことが楽しいか否か」とは一致するときもあるけど、真逆なときもあるでしょう。

「学校の勉強」が勉強のすべてではない、というのは覚えていて損はありません。しかしながら、「学校の勉強」をあまり毛嫌いしてはほしくないという気持ちもあります。せっかくのチャンスなので、うまく生かしたいところです。学校の勉強を「強制的にやらされる嫌なもの」としてとらえるのではなく、せっかくだから「いいとこ取りしてやろう」の精神で主体的に「利用」したいですね。

話はそれますが、村上春樹の『海辺のカフカ』という小説の最初のあたりに、こんな文章が出てきます。家出をしようという少年に対して、カラスと呼ばれる少年が勧める言葉です。以下に引用します。

中学校の授業で教えられる知識やら技術やらが、現実生活でなにかの役にたつとはあまり思えないよ、たしかに。教師だって、ほとんどはろくでもない連中だ。それはわかる。でもいいかい、君は家出をするんだ。そうなれば、これから先学校に行く機会といってもたぶんないだろうし、教室で教わることは好きも嫌いもなくひとつ残らず、しっかりと頭の中に吸収しておいたほうがいいぜ。

村上春樹『海辺のカフカ』

結城はこの考えに百パーセント賛同するわけではないのですが、先ほど私が書いた「利用」という感覚にとても近いです。「学校の勉強」ができるせっかくのチャンスをどう使うか。それは考える価値があります。

あなたは、学校の勉強を苦手だと感じているのだと想像します。ぜひその「苦手」という感覚が何に由来するものかを考えてみてください。人によっては、学校の勉強が苦手なのではなく、教師が気にくわないだけの場合があります。興味はあるんだけど、理解するのに時間が掛かるから苦手と感じる場合もあります。楽しいんだけど、テストの点が悪いから苦手だと感じることもあるでしょう。

そしてその「苦手」というのをいったん脇においた上で自分に聞いてみてください。

・あなたは、知らないことを知るのは楽しいでしょうか。
・できなかったことができるようになるのは楽しいでしょうか。
・意味不明だったものの意味がわかることは楽しいでしょうか。

もしそうならば、あなたは「勉強は楽しい」という感覚を持つ準備が十分にできていますあなたの「苦手」が何に由来しているのかを自問して、何とかそこを突破していただきたいと思います。

私からは以上です。

ご質問ありがとうございました。

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本を書いて生活しています。著書は『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など多数。詳しい活動内容は https://mm.hyuki.net/n/n5f00c9cd281c をご覧ください。2014年度の日本数学会出版賞を受賞しました。