
月見れば千々にものこそかなしけれわが身一つの秋にはあらねど
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大江千里 古今和歌集193 百人一首23 #jtanka
月を見ると、ものごとをあれこれ悲しく思ってしまうなあ……私一人だけの秋ではないのだけれど。
「千々に」は形容動詞「千々なり」の連用形で「いろいろ、さまざまである」の意味。
「ものこそかなしけれ」は「もの+こそ+かなしけれ」。「もの」は「物事」の意味。「こそ」は係助詞で係り結びを作る。「かなしけれ」は形容詞「かなし」の已然形で「こそ」に対する結び。
「あらねど」は「あら+ね+ど」。「あら」はラ変動詞「あり」の未然形。「ね」は打消の助動詞「ず」の已然形。「ど」は逆接確定条件の接続助詞。「あらねど」は「……ではないけれど」という意味。
ラ変(ラ行変格活用)の活用は「ら|り|り|る|れ|れ」。ラ変動詞は「有り(あり)」「居り(をり)」「侍り(はべり)」「いまそかり」の四語のみ。
つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど
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本を書いて生活しています。著書は『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など多数。詳しい活動内容は https://mm.hyuki.net/n/n5f00c9cd281c をご覧ください。2014年度の日本数学会出版賞を受賞しました。