大学一年生、数学科に進むか迷う
質問
二年生から学科振り分けがある大学一年生です。理学部数学科に進むか迷っています。
自分は数学が好きで、もっと深く理解したいので数学科に行きたいと考えています(数学ガールは愛読書です)。
しかし「数学科は就職先が少なく、教師・プログラマ・金融がほとんどで潰しが効かない」「多くの人間が挫折し、苦しい大学生活になる」「役に立たない」などと周りに言われ、確かにそういう面はあるだろうなぁ…と納得してしまい、このまま数学科に進んで自分の人生は大丈夫なのか、人生迷子になったりしないだだろうかと最近すごく不安です。
どのように考えたらよいのでしょう。
結城先生は数学科に進むときこのような躊躇いはありませんでしたか。
結城浩のメールマガジン 2018年9月18日 Vol.338 より
回答
ご質問ありがとうございます。最初に書いておきますが、結城は数学科出身ではありません。
「数学科に進むかどうか迷う」というのはよく聞く話です。理由もあなたが書いたようなものです。
進路を考えるのは非常に大事なことなので、噂や一般論ではなく、事実関係をご自身で調べることをおすすめします。Wikipediaにある[要出典]と同じです。あなたが考えている未来の姿は、どんな情報源にあたって構築されたものでしょうか。あなたの大学からの就職先のデータを調べてみましょう。それから、あなたの大学で実際に数学科に進んだ人に話を聞くのも参考になるかもしれません。可能なら卒業した後の人がどのように感じているかも調べたいところですね。雰囲気やイメージではなく、まずはアップトゥデートで正しい情報収集をしましょう。
ちなみに、実際はどうか知りませんが、仮に就職先が「教師・プログラマ・金融」に限られていたとしても、それを「潰しが効かない」と表現していいんでしょうかね。十分「潰しが効いている」のではないかと思ったりします。
自分の進路を考えるときには、自分の能力や適性について考えることにもなるので、心がゆらぐ要素がたっぷりあります。だからこそ、事実として手に入れられる情報は手に入れておくことが大事になると思います。
大学や大学院で学ぶ期間があります。また卒業後の自分の時間があります。それぞれについて自分はどうしたいかを分けて考えるのはひとつの方法ではあります。あれこれと考えをごちゃつかせてしまうと不安感ばかりが先に立つからです。
未来は見えないものですから、「人生迷子にならないだろうか」と不安になるのは誰しもそうです。そして実際「人生迷子」になるかならないかは、本当のところわかりません。数学科以外だったら安泰ということもないでしょうし、そもそも自分がどう生きることが自分にとって納得のいく人生なのかと考えていくと、そう簡単には結論が出なくて当然です。
進路を考えるときに迷わない人はいません。いや、いるかもしれませんが、どんな人でも「別の進路がありえたのではないか」とは考えます。しかしそれは可能性の雲としてふわふわするもの。あのとき他の道を選び得たと考えるのは事実ですが、その結果本当はどうなったかというのはわからないからです。
事実関係を調べ、自分自身の能力と希望と夢を考え、これからの自分の生き方を推測&想像し、そして最後には「えいや」と決断するしかありません。実際のところ、人生はそういう決断で満ちています。たとえば、あなたが将来何かの職業に就いたとして「実は転職した方がいいんじゃないだろうか」という考えが必ず浮かびます。そしてそのときも「安易に転職したら人生迷子になるのでは」などと不安になります。
オススメは「えいや」と決断する部分は最終的に自分で行うということ。人生は不確定要素に満ちていますから「あのときこうしていれば」と後悔することもあるでしょう。まったく後悔しない進路なんてありえません。それはたとえば数学科に進学する/進学しないという決断においてもそうです。でも自分で決めたのなら、納得ずくで考えを進めることができます。
どうかよい決断ができますように。そして、どんな決断であったとしても、あなたの人生が豊かで実り多いものになりますように。ご質問ありがとうございました。
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