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恋について、愛について(日々の日記)

恋について思うこと。

いろんな人から、

 「それがアンタの悪いクセ。それさえ無くせばうまくいくのに」

などと言われるポイントを持つ人がいます。第三者からそう言われるとしたら、確かにそれは悪いクセかもしれませんし、それさえ無くせば「うまく」いくのかもしれません。

でも実は、それこそ決して手放してはいけないポイントなのかも。それを失ってしまったら、もう私とはいえないんじゃないか。そういうポイントである可能性もわずかにあります。不器用ながらも光を放ち、「あの人」に見つけてもらうための小さなシグナルなのかもしれません。

たった一人のあの人に、見つけてもらうための、大切なシグナル。

 * * *

たくさんの人から「好きです」と言われるのはうれしいものです。それがイヤな人は少ないでしょう。でも、よく考えてみると、私たちが本当に求めているものは違います。あの人から「3」もらい、別の人から「2」もらい、誰かから「10」もらうなんて、そんなのを求めているんじゃない。

そういうのじゃなくて「たった一人のあの人」から、「三千億」か「七百兆」もらいたい。もっというなら、あの人のすべてが欲しい。あの人のわずかなイプシロンでも誰にも奪われることなく、すべてが欲しい。

あの人のすべての視線、すべての言葉、すべての思い、すべての喜びと悲しみを、すべての重みを、私にだけ送ってほしい。私だけに送れ。私は全部受け止めるから。あなたのすべてを総取りだ。すべてのすべてを私のものにしたい。

恋とは、そういうものだと思っている。

 * * *

最高に悲しいのは、恋する相手から攻撃されることではありません。名指しで責められたり恨まれたりすることではありません。最高に悲しいのは、あの人から、

 「えっと、あなた、どちらさまでしたっけ?」

と言われることです。その他大勢のモブ扱いにされるくらいなら、悪役のヒール扱いがまだましだ。それが恋ではないでしょうか。

 * * *

こうも言える。人を殺すのは拳銃ではなく悪意でもない。人を殺すのは「無視」である。存在を無視されるとき。存在を無意味にされるとき。すべてをなかったとされるとき。あたりまえだと一顧だにされないとき。そのとき、人は死ぬ。

「無視」の真逆は何だろうか。誰かを特別な存在として扱うことだろうか。その人の言葉や、振る舞いや、意思決定を、尊重し大切に扱うこと。一見つまらないことに思えても「あなたがいうなら、考えてみましょう」という扱いをすること。それが無視の逆かな。それは愛だろうか。

 * * *

愛について思うこと。

「恋」から「愛」へ一歩進むと何が変わるだろうか。ここから難易度が上がる。「愛し合う二人」は互いに相手に命を捧げ、相手を100%受け入れ合う。そのように願う二人が出会うというのはまるで奇跡だけれど、多くの結婚はここから生まれている。

しかし残酷なことに、時間は変化をもたらす。互いの要望の変化、気持ちの変化、力の変化。その中で、結婚式の誓いを守れるか、どうか。

 「健やかなる時も病める時も、互いにこれを愛するか」

「誓い」というものの特徴が一つある。それは「人がどうしても破ってしまいがちなことが提示される」という点。誰も破らないなら誓う必要なんてないからだ。誓いは、人が引っかかるところをカバーする。

「病める時も」が誓いの式文に入っている意味は深い。

 * * *

結城は言葉の人だから、言葉の力を信じている。「愛します」という宣言は力を持つ。「ゆるします」という宣言は力を持つ。もしも迷うことがあるなら、迷いを打ち砕く宣言をすることには意味がある。声に出して、大声で宣言しよう。

愛とは感情ではなく意志である。好きだから嫌いだからとは次元が違う。愛は約束と似ている。そのように決めたから、だから、私の気持ちがいくら揺らいでも、私はあなたを愛します。これは「約束」だから。人の気持ちは揺らぐけれど、約束は揺らがない。

多くの人は、自分の気持ちが大事という。好き嫌いが大事という。それは正しいだろうか。なぜなら、自分の好き嫌いは頻繁に変化するからだ。誰しもあるとき気の迷いで「あなたなんかきらい! 死んでしまえ!」と言いたくなる。でも「愛」というのは、その状態でも変わらないのではないだろうか。怒っても使える運転免許証のように。泣いても有効な婚姻届のように。

 * * *

恋について、愛について、そんなふうに思っている。

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結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年11月22日 Vol.243 より

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#結城浩 #日々の日記 #恋愛 #恋 #愛 #人間関係


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本を書いています。『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など。https://link.hyuki.net/mm でメルマガ配信中。https://link.hyuki.net/girlnote でcakes連載中。2014年度日本数学会出版賞受賞。

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