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星新一『声の網』/就職に役立つプログラムを作るべき?/ふと激しい怒りに支配される/価値観の押しつけ/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2023年1月10日 Vol.563



はじめに

こんにちは、結城浩です。

最新刊の話。

結城は現在「数学ガールの秘密ノート」シリーズ第16弾に取り組んでいます。

先週は参考文献と読書案内までレビューアさんに送り、ほぼすべての原稿の執筆が終わりつつあります。現在は第5章の大きな修正を行っており、今週これが終わればめでたく脱稿となります!

継続的な応援に感謝します!

刊行の予定はまだはっきりとは決まっていませんが、2023年の春頃になると思います。どうぞお楽しみに!

◆数学ガールの秘密ノート/第16弾(ただいま執筆中!)

「数学ガールの秘密ノート」シリーズは15冊ありますけれど、どれから読んでも楽しめますので、ぜひどうぞ!

◆「数学ガール」って、どれから読めばいいの?

* * *

それでは今回の結城メルマガもどうぞごゆっくりお読みください。



目次

  • 星新一『声の網』

  • 自分の趣味でプログラムを作るか、就職に有利なプログラムを作るか

  • スピード優先? - ショート

  • ゆるしたはずなのに、ふと激しい怒りに支配されてしまう

  • コツを納得する - ショート

  • 価値観の押しつけについて



星新一『声の網』

AI技術が進化し続けています。画像を作れる。動画も作れる。文章も作れる。プログラムも作れる。

さまざまなものを作り出すことができるので、良いことがたくさんできます。しかし、それと同時に悪いこともたくさんできるようになりますね。その意味でも、人間に近づいているみたい。

AI技術が進化し続ける今こそ再読したい物語がこちら。ショートショートの名手、星新一の『声の網』です。サスペンスに満ちた世界が描かれています。

結城が本書を読んだのは、いまから何十年前でしょうか。遠い昔の話ですが、夢中になって読んだのをいまでもよく覚えています。

書かれた時代のために、現代ならば「インターネット」を使って描かれるであろう世界が「電話網」を使って描かれています。

◆星新一『声の網』(角川文庫)



自分の趣味でプログラムを作るか、就職に有利なプログラムを作るか

質問

プログラムで作る物について、結城さんに質問です。

私は大学二年生です。趣味でプログラムを作っています。ふだん作っているのは、それほど規模が大きくないテトリスやパックマンに似たようなゲームです。

ゲームライブラリやゲームエンジンを使わずに作っています。自分の頭だけで作りたかったので、他人のソースコードもあまり読んでおらず、ソースコードは汚いです。でも、作成後に先人の良い処理を知ったなら、それを組み込んだりもしています。

あるとき友人から、就職に有利になるようなものを作ればいいのにと言われ、そうかもしれないと思いました。

自分の趣味で小さなゲームばかり作るのではなく、Webサービスを作ったり、機械学習に手をつけたりした方がいい気もします。ただ付け加えると、現在のところIT分野に絶対に就職したいという希望を持っているわけではありません。

「趣味のプログラム」を作るか。「就職に有利になるプログラム」を作るか。この二択で非常に迷っています。もちろん両方に通じるプログラムができれば一番だとは思っています。

「趣味のプログラム」と「就職に有利になるプログラム」とで、どちらを作ったらいいか、それをお聞きしたいです。

回答

ご質問ありがとうございます。

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