
「ほんとうに相手は理解しているのか」をチェックしたいときに(コミュニケーションのヒント)
※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです。
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こんにちは、結城浩です。
今日は、「ほんとうに相手は理解しているのか」をチェックしたいときにどうするかというお話をします。
打ち合わせにて。
A「じゃ、そういう手順でお願いします。ここまでの話、わかりました?」
B「わかりました」
さあ、ここで問題です。
いま「わかりました」と言ったBさんは、ほんとうに「わかった」のでしょうか。
わかったかもしれないし、わかっていないかもしれませんよね。「わかりました」と言うことは誰でもできますが、実際にわかっているとは限りません。別にBさんが嘘をついているといいたいわけではなく、本人はわかったつもりになっているけれど、Aさんが求めるほどの理解に達していないかもしれないということです。
では、どうやってBさんが「わかっている」かどうかを確かめたらいいのでしょうか。
こんなふうに「念を押す」ように尋ねればいいでしょうか。
△「ほんとうに、わかりましたか?」
いえいえ、このような聞き方をしても、あまり意味はありません。「ほんとうに、わかりましたか?」と尋ねて「いえ、実は、よくわかっていません」と答える人は少ないでしょう。だからそのような「念を押す」だけの確認には、あまり意味はありません。
●角度を変えて問う
相手の理解を確認したいのであれば、「角度を変えて問う」ほうがよいですね。
「手順の三番目はちょっとわかりにくいと思うんですが、
もう少し具体的に話した方がよいですか?」
たとえばこんなふうに水を向けてやります。そうすると、言われた人は「ええと、手順の三番目って何だっけ…あれ?よく覚えてないなあ」のように考えてくれるでしょう。そして話し手が「わかりにくい」と言ってるので「じゃ、せっかくですから、教えていただけますか」と言いやすいですね。これは優しい確認方法です。
●理解をチェックするための質問をさりげなく放つ
相手の理解を確認したいのであれば、「理解をチェックするための質問をさりげなく放つ」という方法もあります。
「環境変数がセットされていないと、
手順の二番目で失敗するかも知れませんよね。
あなたは普段、どういう設定にしていますか?」
たとえばこんなふうに「わかっているなら即答できるような質問」をさりげなく振ってみるのです。それに対して具体的に答えられたら○、あいまいならば△印です。
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理解を確認するやりとりは、話し手が「聞き手のモデル」を心の中に構築するプロセスともいえます。
・こういうことを言ったら、この人はこう行動するだろうな
・この人がOKだと言ったら、まず大丈夫
・この人が「だいたいわかった」と言ったときは、わかってない可能性が高い
・この人は細かいところのチェックはOKだけれど、時間にルーズ
私たちは相手に対してそのような「予測」をたてます。コミュニケーションによって、その「予測」の確からしさを修正します。そしてできるだけリスクを減らすような一手を打つでしょう。
もちろん、このような「モデル」は、一方向ではありません。お互いに相手のモデルを構築しています。一緒に仕事をする両者が、互いの良い点も弱い点も理解しながら進み、トレードオフの森をくぐり抜けて、一人ではできない仕事を達成することができたとき、なかなか良い連係プレーができたと言えるのでしょう。
A「じゃ、そういう手順でお願いします。ここまでの話、わかりました?」
B「わかりました」
コミュニケーションは、相手が「わかりました」と言った時点で終わりになるのではありません。むしろ、そこから始まるといえるのかも。
まとめます。
「ほんとうに相手は理解しているのか」をチェックしたいときには、「念を押す」のではなく、
・角度を変えて問う
・わかっているなら即答できるような質問を振る
などの工夫をしてみてはどうでしょうか。
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