自分の能力の低さにイライラしてしまう(仕事の心がけ)
質問
結城さん、こんにちは。
何とかして、自分の能力の低さにイライラしてしまうのをやめたいです。
能力の低さを意識することがモチベーションをアップすることに繋がる場合も、ごくまれにはあります。でも、ほとんどの場合は、自分の集中力を乱す方向に働いてしまいます。
何かアドバイスをいただけると嬉しいです。
結城浩のメールマガジン 2019年7月30日 Vol.383 より
回答
ご質問ありがとうございます。
「認識の解像度を上げる」というのは一つの方法です。
「自分は能力が低い」と感じるときには、無意識のうちにあまりにも無茶な一般化をしていたりします。それを見つけて、注意深く変更していきます。それが「認識の解像度を上げる」ということです。
例を挙げましょう。「経験した出来事を、どう認識するか」という例です。(1)と(2)とを比較してみてください。
(1)仕事として命じられて書類を書いた。しかしその書類の中に誤記があったため、上司にイヤミを言われた。
↓
自分は、能力が低いのだ。
(2)仕事として命じられて書類を書いた。しかしその書類の中に誤記があったため、上司にイヤミを言われた。
↓
自分は、書類を作るときに誤記をしたのだ。
(1)と(2)の違いはわかりますか。同じ経験をしているにも関わらず、自己の認識に大きな差があることがわかるでしょう。
* * *
(1)で行っている「能力が低い」というのはたいへん一般化された認識であることがわかります。そもそも「能力」というくくりの何と大きなこと! ぶっちゃけ、大ざっぱ過ぎです。
(1)で行っている一般化し過ぎや大ざっぱな認識をやめましょう。まるで最初から「自分は能力が低いんだ!!!」というチャンスをねらっているかのような行動ですよね。それをやめましょう。
(1)みたいな一般化では途方にくれるばかりです。だって「自分は能力が低い」となったら、どうしようもありません。自分が次にどんなアクションを取ったらいいかもわかりません。
* * *
(2)に示したように、事実を事実として認識し、解像度高く現象をとらえる練習をしましょう。過度な一般化をやめ、起きたことをそのまま受け止めるのです。
(2)に示した例を読むとわかりますが、解像度を高くして事実を事実として受け止めると「対策」を考える気になりますよね。「書類を作るときに誤記をした」ならば「どうやったら誤記を防げるだろうか」という発想に至るのは自然です。
* * *
「自分の能力が低い」という結論に走る前に、起きた事実をよく見ましょう。そしてそれをどう認識するかを考えましょう。最初から「ああっ、やっぱりっ、自分は能力が低い! まただ、またこれだよ! こないだもそうだった……」のような「いつものパターン」に陥っていませんか。そこを打ち砕きましょう。
過去に起きた似た事例を振り返ることは大事です。しかし、まずは、いま起きた事実を正確にとらえましょう。発生した事実を自分の能力や人格にダイレクトに結びつけて嘆くのをやめるのです。そして「起きた問題の解決と再発防止」に心と時間を使いましょう。がんばってください。
ご質問ありがとうございました。
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