結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年9月11日 Vol.337
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結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年9月11日 Vol.337

/思考力を鍛える/数学的帰納法/大学一年、教科書を読んでもまったくわからない/高校二年、計算ミスへの対策/上位互換キャラ/

はじめに

結城浩です。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

台風21号に引き続き、このたびの北海道地震で被害にあった方々にお見舞い申し上げます。

北海道にはさくらインターネット石狩DCがあり、その被害状況がTwitterやWebで流れていました。そのときに思ったのは「ネットやクラウドといっても、この地球上にあるもので、誰かがしっかりメンテナンスしているから存在できるのだ」ということでした。

もちろん、ネットに限った話ではありません。水道・電気・ガス・交通などのインフラもそうですし、警察や消防に携わる方々についてもそうです。Twitterでもインフラを守る人とその家族にまつわるツイートが流れていました。本人が被災しているにも関わらず、懸命にサービスを守り、継続している方々には深く感謝し敬意を抱くとともに、心から安全を祈ります。

* * *

先週は、『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』の初校読み合わせがありました。たくさんの図版を手直しし、加筆修正したゲラ原稿を編集部に出してきました。少しずつ、少しずつ完成に近づいています。

「数学ガールの秘密ノート」シリーズは今回でなんと10作目。結城がこれまでに書いたシリーズもので最長です。しかもこれからもまだまだ続けていく予定。一冊一冊をていねいに仕上げていきますので、ぜひ応援よろしくお願いいたします。

『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』は2018年10月刊行の予定です!

◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』
https://bit.ly/hyuki-matrix

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では、今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。

目次

少子化対策について思うこと
思考力をとにかく鍛えるにはどうするか - 学ぶときの心がけ
数学的帰納法による証明
大学一年、教科書を読んでもまったくわからない - 学ぶときの心がけ
高校二年、計算ミスへの対策 - 学ぶときの心がけ
上位互換キャラが出てくると逃げてしまう


少子化対策について思うこと

結城はあまり政治的なことや社会的なことはこの「結城メルマガ」では書きません。もともと興味が薄いからでもありますし、具体的な知識に欠けているため見当はずれなことを書いてしまいそうだからです。

でも、「少子化対策」についてふと思うことがあったので、簡単に書きたいと思います。誰かを批判しているわけではありませんし、何かを強く主張しようというのでもありません。

「少子化対策」というのは「子供を産ませる方策」だと考えるのはあまり適切ではないように思います。「少子化対策」は「子育てしながらも、各個人が望む多様な社会活動を安心してできるようにするための方策」であるべきなのではないかなと思います。そう考えると、誰がどこでどんな活動をしていようとも、自分が関わる活動を「子育てしながらでも参加できるように改善する」ことは、大切な「少子化対策」ではないでしょうか。そしてそれは、私たちみんなが活動しやすい社会にすることにつながると思うのです。

そのことを感じたのは、会社勤めしていたときのことを思い出したからです。会社に「耳がよく聞こえない人」が入社してきました。いままでは会議で口頭で行っていた伝達事項も、文書とスライドを多く使うようになりました。もちろん入社してきた「耳がよく聞こえない人」のためです。その結果、会議の時間は短くなり、伝達事項は明確になり、記録もきちんと残るようになりました。そのことを印象深く覚えています。

「子育てしている人」も「何かが不自由な人」も、社会の足かせではありません。逆に、その人の視点に立って体制を整えるなら、他の人の活動もずっとスムーズにできるようになり、社会がよくなるのではないでしょうか。適切な休暇を取れるようになること、ノンステップバスの登場で楽にバスに乗れること、バリアフリー住宅、などなど「社会の改善指針を与えてくれる人」は社会にとって大事な存在といえないでしょうか。

念のために補足しておきますが「社会にとって大事な存在」や「少子化対策」という表現は、やや微妙な問題を含んでいます。というのは国や社会や集団の利益を先行させた表現ともいえるからです。私が言いたいのは、子育て世代や、身体に不自由な部分を持っている人へのサポートは、決してその人たちだけのためのものではないということです。

私たちは、どこでどんな活動をしていようとも、それぞれの立場から、自分たちが生きている環境をよりよくすることができます。もちろん、その「よりよくする」分量や規模は人によって違います。社会全体を変える意気込みの人もいるかもしれませんが、ほんのちょっとしたことから始まるものもあります。それこそ「電車で席を譲る」や「育休を取ろうとしている同僚を応援する」のような、そんなちょっとしたことから。

当然に認められた権利に対しても、もしかしたら「苦言」を呈したり「文句」を言う人がいるかもしれません。そんな人に対して、勇気を奮って「お言葉ですが」と一言クギを刺し、同僚を守ること。その一言が、社内の空気を変え、より住みやすく働きやすい場を作るかもしれません。

「少子化対策」について、ふと、そんなことを思いました。

思考力をとにかく鍛えるにはどうするか - 学ぶときの心がけ

質問

思考力をとにかく鍛えるにはどうしたらいいでしょうか。

回答

ご質問ありがとうございます。

思考力を鍛えるのに大事なことはたくさんありますが、一つだけ挙げるなら「自分に問いかけること」です。「自分に問いかけること」をまったく行わないで思考力を鍛えることは不可能でしょう。

手始めに、自分への問いかけとして「思考力とは何だろうか」と問うてみてください。思考力とは何だろうか。他の人はさておき、私は思考力を何だと思っているか。私は思考力を必要としているだろうか。私が考える思考力とはそもそも鍛えられるものだろうか。

そのように、関心のあることに対して素朴な問いを自分に投げかけ、それに答えようとしてみるのです。答えるためには考えなくてはいけません。それが「自分に問いかけること」の意味です。

ここであなたの質問を振り返ってみましょう。あなたの質問にある「思考力をとにかく鍛えるにはどうしたらいいでしょうか」というのは、思考力を鍛えることから遠ざかる態度だと私は思います。「とにかく」という言葉からは「つべこべ言わずに」「めんどくさい話はいいから」「てっとり早く」「ポンと答えを」「これさえあればいいというものを」というニュアンスを感じるからです。

誰かが提示したものを鵜呑みにするのは楽です。簡単です。「はい、これが答えです」といわれてそれをゴクンと飲み込めばいいだけですから。でも、そこには思考はありません。

「はい、これが答えです」と言われたときに「ほんとうにそれが答えなんだろうか」「なぜ、それが答えといえるのか」「他に答えはないのか」「この答えはいつまで正しいのか」のように自分に問いかけて、確かめること。これは思考の大切なあり方です。

その意味では、思考するというのは「めんどくさい」ものです。日常生活で何かをするたびに考え込む人がいたら「めんどくさい人」扱いされるかもしれませんね。まあ日常生活では適当に進むとしても、自分の頭の中では「でも、本当のところは何が答えなんだろう」と問いかける。その態度は思考力を鍛えると思います。

ただし、思考するのは「めんどくさい」ことですが、めんどくさいことが思考の本質ではありません。何かをよくすること、よりめんどくさいことを考えずに済むこと、楽をすること、が思考の目的のことも多いものです。

ということで、あなたへの回答は「自分に問いかけましょう」となります。この回答を鵜呑みにするかどうかは、あなたの自由です。さあ、自分への《問いかけ》を通じて、考えることを始めましょう!

数学的帰納法による証明

質問

結城先生、質問失礼します。

最近、学校で数学的帰納法を習いましたが「数学的帰納法によって命題が証明できることの証明」のようなものはあるのでしょうか。

また、「証明できている」とはどういうことなのでしょうか。

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本を書いて生活しています。著書は『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など多数。詳しい活動内容は https://mm.hyuki.net/n/n5f00c9cd281c をご覧ください。2014年度の日本数学会出版賞を受賞しました。