
良き人の物語するは(徒然草 第五十六段より)
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兼好法師作 結城浩訳
品がある人が話をするときには、たくさんの人がその場にいても、たった一人に向かって話します。それなのに自然と他の人まで引き込まれて聞いてしまいます。
ところが品のない人が話をするときには、誰かに向けてではなく、皆に対してでしゃばり、自分が見てきたかのように話します。なので皆同じように爆笑し、大騒ぎになってしまいます。こういうのはたいへん騒々しいものです。
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よきひとのものがたりするは ひとあまたあれど ひとりにむきていふを おのづからひともきくにこそあれ。
よからぬひとは たれともなく あまたのなかにうちいでて みることのやうにかたりなせば みなおなじくわらひののしる いとらうがはし。
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本を書いて生活しています。著書は『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など多数。詳しい活動内容は https://mm.hyuki.net/n/n5f00c9cd281c をご覧ください。2014年度の日本数学会出版賞を受賞しました。