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結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年8月28日 Vol.335

/専門書を選ぶ基準/高校二年生、成績はいいがわからないことが多すぎて不安/大学数学のおすすめの勉強法/いま、書こう。/

はじめに

結城浩です。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

先週、「秋めいた」と言いたくなるような涼しい日もありますね……などと書いたのですが、それ以降「とんでもない暑さ」が何度も続いています。

早く、もっと「秋めいて」ほしい……

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結城はpixivFANBOXというサービスで「結城浩のカフェ代支援」という企画を行っています。ひと月200円で、結城の「カフェ代」を支援してね!というものです。

先日「結城浩のカフェ代支援」をしている支援者さんだけがスマートフォンに表示できる「ファンカード」機能がつきました。

◆結城浩の「ファンカード」

これは画像ですが、実際の「ファンカード」はスマートフォンに表示するとキラキラと動くものになります。

◆「ファンカード」について
https://www.pixiv.net/fanbox/creator/24344450/post/112253

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現在初校ゲラを読んでいる『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』は、刊行が予定より少し遅れて2018年の10月になります。お待たせして申し訳ありませんが、応援よろしくお願いいたします!

◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』
https://bit.ly/hyuki-matrix

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それでは、今回の結城メルマガも、どうぞごゆっくりお読みください。

目次

■専門書を選ぶ基準 - 学ぶときの心がけ
■講演を聞いた後にどう質問したらいいかわからない
■高校二年生、成績はいいがわからないことが多すぎて不安 - 学ぶときの心がけ
■大学数学のおすすめの勉強法 - 学ぶときの心がけ
■「神経衰弱」ゲームを作る
■数学科の四年生、限られた時間で学習を進めるいい方法 - 学ぶときの心がけ
■いま、書こう。 - 本を書く心がけ


専門書を選ぶ基準 - 学ぶときの心がけ

質問

現在高校生です。

一般に専門書はどのような基準で選ぶのが良いのでしょうか。

回答

ご質問ありがとうございます。

これはなかなか難しい質問です。細かく書いていくとたくさん出てきそうなので、ポイントを絞ってお話しします。

ポイントは二つ。「信用」と「理性」です。

一つ目のポイント。「信用」というのは、その専門書は誰が書いたか。どんな出版社から出されているか。出版されてから何年経ったか。どれだけ増刷されているか。先生による評価はどうか。図書館に入っているかということです。

「信用」は、いわば外部にあるネットワークです。あなたが信用できる人、組織、会社、仕組みが「いい」というものを「いい」とみなす。これは大切な判断基準になります。そして、これは専門書以外にも当てはまる話ですね。

二つ目のポイント。「理性」というのは、その専門書をあなた自身が読んだときにどう考えるかになります。論理の展開に辻褄が合っているか。読んでいてなるほどと思えるか。明らかにおかしなことが書かれていないか。読んでいて抱いた疑問に答えが与えられているか。そのように、あなたがあなた自身の理性に照らし合わせて、その専門書の良し悪しを判断するということです。これも大事なこと。

「理性」は、いわばあなたの内部にあるネットワークです。一貫性、整合性、過去に知ったこととの無矛盾性。それらに照らし合わせてその専門書の良し悪しを判断するということです。

「信用」と「理性」という二つのポイントは相補的に働くことに注意してください。

たとえば、「自分はこの本をイマイチだと思うのだけれど、自分が信用している先生がいいと言ってるから、もう少し読んでみるか」というのは、「信用」を少し優先させた行動になります。

あるいはまた、「先輩はこの本が役に立たないというけれど、自分が抱いている疑問がきちんと解消されている。いまの私にはぴったりの本だったのだ」というのは、「信用」ではなく「理性」が教えてくれることになります。

他の人がいいと言ってるからその評判をうのみにするというのは自分の「理性」を効かせていない状態だし、逆に自分にはこれが一番だと言って他人の声を無視するのは「信用」できる外部のチェック機構を持っていない状態ですね。どちらもちょっとあぶないです。

専門書を読むときの「信用」と「理性」という二つのポイントは、どこかにごろんと完成品が転がっているわけではありません。誰しも自分の中に育てて行く必要があります。

あなたの「基準」を育てるのはあなた自身なのです。

自分の基準を自分が育てるというのは、どの分野に関しては何をどのくらい信用するか、自分の理性をどれだけあてにするか、その度合いを自分の中に構築することを意味します。実はこれ、意識しているかどうかはさておき、みんなが自然にやっていることだと思います。「価値観の醸成」とも言えますね。

世の中には、いろんな人がいます。いろんな考え方があり、いろんな本があります。ネットを見ていてもわかりますが、自分にしてみると驚くべき価値観を持っている人がいてびっくりします。でもその人はその人なりに自分の価値観を醸成してきたんですよね。

自分が日々接するもの。自分が普段接する人。自分がいつも考えていること。それらを通して自分の価値観は醸成されていきます。

ぜひ、意識して自分の「基準」を育て、価値観を醸成してくださいね。

もとの質問から回答がだいぶそれちゃいましたが、ご質問ありがとうございました。

講演を聞いた後にどう質問したらいいかわからない

質問

講演などを聞いたあとの「質問」をどうすればいいのかわかりません。

しっかり聞いていても質問を思いつかず、他の人からも質問がまったく出なかったときには「ちゃんと聞いてた?」と言われてしまいました。

ちゃんと聞いていれば質問が出るものでしょうか。

質問しようと思いながら一生懸命に講演を聞いたことがありますが、お話のあら探しをしているようで嫌な気分でした。

回答

ご質問ありがとうございます。

「ちゃんと聞いてた?」というのは講演者自身からの問いかけでしょうかね。

「ちゃんと聞いてた?」という問いかけは非難めいたニュアンスを感じますよね。そういうときには空気を読まずに「はい、聞いてました(にこにこ)」などと返すのも一法です。

「質問をしなければならないけど質問を思いつかない」というときには「質問というわけでもないのですが」と前置きして、ふつうに感想と感謝を述べるという方法もあります。

純粋なテクニックとしては、講演の中に出てきた適当なキーワードを使って「○○のところがわからなかったので、補足説明をお願いします」のように聞く方法もあります。でもこれは、単なるテクニックであって意味のある行為ではありませんけれどね。それから、講演のメイントピックに対してこのような質問をすると、講演者が「私の講演をさっぱり聞いてなかったってことかい」になるので注意が必要です。

純粋なテクニックとして質問する方法はいくらでも思いつきます。講演中のややこしそうな話題を拾って「○○に具体例はあるのですか」と聞いたり、「○○は歴史的にいつごろからあったんですか」と聞いたり、「○○を最初に考えたのは誰でしょう」と聞いたり……でも、無理矢理作り出した質問はあまり意味はないですね。

講演をする側の心理を想像してみます。講演が終わって、会場がしーんとなり、質問も出てこないというのは講演する側にとっては不安になるものです。みんな興味深いと思ってくれたんだろうか。みんな理解できたんだろうか。いや、そもそもみんな聞いてくれたんだろうか。講演後のしーんとなった会場に立つ自分を想像すると「ちゃんと聞いてた?」と言いたくなる気持ちもわかります。

その心理から考えるに、質問が出るかどうかというのはあまり重要ではなくて、「ちゃんと聞いてましたよ」ということを伝えれば、その場は平和に収まるでしょう。

もっとも、講演を聞く側が講演者にそれほど気を遣う必要があるかというのは別の問題として残りますけれどね……

実は、聴衆の反応というのは講演者にかなり見えています。みんなが聞いているかどうか、理解しているかどうか、それらは手応えとして伝わるものなのです。

結城が講演をするとき、冒頭で「反応がないと不安になるので、おもしろいと思ったら笑ってくださいね。なるほどと思ったら頷いてくださいね」とお願いします。高校で講演をしたとき、生徒さんはこのお願いをすると笑ったり頷いたりしてくれるので、講演者としてはたいへん心強いです。

以上です。ご質問ありがとうございました。

高校二年生、成績はいいがわからないことが多すぎて不安 - 学ぶときの心がけ

質問

現在、公立の高校二年生です。

数学はおそらく得意な方で、進研模試だと偏差値80くらい出ます。

が、簡潔に言うと、わからないことが多く感じて不安です。問題に出会うたび、「あ、ここ、わかっていないかも」「忘れちゃいそうだな」「このままで先進むの怖いや」と思ってしまいます。

この不安感とはどう向き合えばいいでしょうか。

不安感を感じ始めたのは高校数学を始めたころからです。

成績は下がっていません。

回答

ご質問ありがとうございます。

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結城浩です。はげまされるのはとってもうれしい!
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結城浩

書籍執筆者。著書に『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など。http://bit.ly/hyuki-mm にて「結城メルマガ」をnote配信中。https://bit.ly/girlnote にてcakes連載中。2014年度日本数学会出版賞受賞。

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