今はとて君がかれなばわが宿の花をばひとり見てしのばむ
#読人しらず #古今和歌集 0800 #jtanka #短歌 #恋
あなたが「それではね」と言って離れてしまったならば、私はたったひとりで家の花を見て、あなたのことを偲び、あなたがいないことを耐え忍びましょう。
「今は」は「今となっては」「このようになった以上は」の意味で、別れのときに使う表現。
「とて」は引用を表す格助詞。「……と言って」の意味。
「かれなば」は「かれ+な+ば」。「かれ」は下二段活用「かる」の連用形。「な」は完了の助動詞「ぬ」の未然形。「ば」は順接の仮定条件を表す接続助詞。「かれなば」で「離れてしまったならば」。「かる(離る)」は心の距離が広がり男女の仲が疎遠になることを表す。しばしば「かる(枯る)」との掛詞になる。
「宿」は「家」のこと。
「しのばむ」は「しのば+む」。「しのば」は四段活用「しのぶ」の未然形。「む」は意志・意向を表す助動詞「む」の終止形。「偲びましょう」あるいは「忍びましょう」の意。
本来「偲ぶ」は四段活用で「忍ぶ」は上二段活用だが、混同により両方の用法が生まれている。
いまはとて きみがかれなば わがやどの はなをばひとり みてしのばむ
いまはとて きみがかれなば わがやどの はなをばひとり みてしのばん
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