生徒にとって状況説明は難しい(教えるときの心がけ)
結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2017年5月23日 Vol.269 より
結城メルマガは「コミュニケーションの心がけ」というタイトルを冠しています。毎回、とても広い意味での「コミュニケーション」を題材にして、あれこれと文章を書いています。
私自身がコミュニケーションの達人と偉ぶりたいわけではありません。成功も失敗も含めて「コミュニケーション」というものに関心があるので、メールマガジンにもこのようなタイトルを付けたのです。
実際、コミュニケーションは難しいです。そして、難しいのは、
「コミュニケーションは人間関係そのものだから」
だと思っています。人間関係が難しいので、コミュニケーションも難しいのです。
* * *
今回の「教えるときの心がけ」のコーナーでは、
状況説明は難しい
というお話をしましょう。
「教える」という活動では、教える人と教えられる人(学ぶ人)がいます。お話を進める都合上、ここでは「教師」と「生徒」と呼びましょう。「教師」と「生徒」といっても実際には「先輩」と「後輩」かもしれませんし、「上司」と「部下」かもしれません。
要するに、
・教師 …… 教える人
・生徒 …… 教えられる人(学ぶ人)
という関係だと思ってください。この文章では主に「教師」の側に立つ人へ向けてお話をします。
状況説明は難しい
さて、教師の立場にある人が、生徒の立場にある人に対して
「状況を説明してもらう」
という場面はよくあることです。
たとえば、教師が生徒に対して、
「わからないところはどこ?」
と問いかける場面です。教師は、そのような問いかけを通して生徒の状況を把握し、話すべき内容を調整しようとするわけです。
生徒に要求していることは単純です。生徒自身のことを話してくださいといってるだけですから。けれど、生徒にとってそれに答えるのは想像以上に難しいことです。
生徒が自分の状況を説明するのがどうして難しいのか、理由はたくさん考えられますが、ここでは三点にしぼって挙げてみましょう。
・本人が混乱しているため
・非難されていると感じるため
・説明する言葉を持たないため
順番にお話しします。
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