お仕事メールでは、用件を最初に書くのだが… (コミュニケーションのヒント)
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こんにちは、結城浩です。
「コミュニケーションのヒント」のコーナーです。
お仕事でメールのやりとりをするとき、用件がメールのはじめに書いてあると話が早いですね。
前置きの文章がながながと書かれていて、最後に一言「この件に関して調査をお願いします」と書いてあるのは困ります。へたをすると最後の用件を見逃してしまうかもしれません。メールのはじめに「一件、調査をお願いしたいことがあります」と書いてあるだけで、メールは読みやすくなります。
お仕事メールは、最初の数行を読むだけで、用件がわかるように書きたいものですね。
…と、ここまでは「メールの書き方」といったハウツー文書に必ず書かれているお話。
ではここで、もう少し踏み込んで考えてみましょう。気になるポイントが二つあります。
(1)「どうしてこの送信者は、用件を最初に書かなかったんだろう」という点。
(2)「私は、どうすればよいだろう」という点。
●(1)「どうしてこの送信者は、用件を最初に書かなかったんだろう」
「まったくもう!お仕事のメールっていうのは、最初に用件を書くもんだよ!」と愚痴るのは簡単です。
でも、それ以前に、どうしてこの送信者は、用件を最初に書かなかったんだろう? という疑問がわいてきませんか。もちろん、いろんな可能性が考えられます。
(a) 単にそういう「お仕事メールの書き方」に関する知識がなかったから。
→こういう人は、知識を教えられれば今後できるようになるかもしれません。
(b) メールの内容を「書きながら」考えていた。そして最後になってはじめて「あ、そういえば、これをお願いしなくちゃ」と気がついたから。
→こういう人は、メールを書いてすぐに送るのではなく、いったん読み返す(そして再構成する)習慣を付けるとよいですね。
(c) ある種の「恐れ」があるから。
→これはちょっと分かりにくいですね。「ある種の恐れ」というのは、端的に言えば「この用件をお願いするの、やりにくいなあ…やりたくないなあ…」という気持ちです。
上の(c)は分かりにくそうなのでもう少し補足しましょう。「仕事を依頼するメール」だと(c)になる場合は少ないですかね。でも「仕事の進捗報告メール」では非常に多いものです。要するに「○○の作業がトラブっていて、〆切に間に合いそうもありません」という報告メールを書くときです。
〆切に間に合いそうもない
→ まずいなあ
→ 進捗メールで上司に伝えなくちゃ
→ でも怒られちゃうなあ
→ まずいなあ
→ …
こういう心の動きによって「まずい報告は、最後の最後にちょこっとだけ書いておく」という結果になりがちです。そうすれば「自分は報告している」という偽物の満足感と、「遅れの報告をして怒られる」危険回避の両方を同時に満たせるからです。
でも、もちろんこれは仕事メールとしては間違っています。進捗遅れの報告こそ、まっさきに受信者の目にとまるように書くべきだからです。その際に、「自分が怒られるかどうか」というのは二の次、事実の報告が重要。
以上、(c)の補足はおしまい。
●(2)「私は、どうすればよいだろう」
メールをもらった。そのメールの最初には用件が書かれていなかった。かといって、時候の挨拶メールではなく、純粋な仕事メール。しかも重要な用件がメールの最後に書かれていた。そのようなメールをもらったら、どうすればいいのでしょう。
まず考えましょう。想像しましょう。この送り手は、どうしてこんなメールを書いたんだろうって。メールに慣れていないからかもしれません。メールを読み返さなかったのかもしれません。恐れを抱いているのかもしれません。原因は、なんでしょうね。
で。私は、どうすればよいんでしょうか。「メールは人間関係」ですから、「こうすればよい」という正解はありません。相手との関係に応じて対処する必要があるでしょう。
親しい間なら「用件は最初に書いておいてほしいなあ」とざっくばらんに書くのがよいでしょう。
場合によっては「この人はこういうメールを書く人なんだから、自分の方で適応しよう」と我慢するかもしれません。
自分が指導的な立場にあるなら「こういうときにはね、こういう風にメールを書くとわかりやすいですよ」と添削すべきでしょうか。
いずれの場合でも大事なことは「相手との今後」を考えることです。「メールは人間関係」です。相手との今後のコミュニケーションが改善する方向に「打てる一手」はないか、と考えましょう。その一手を打つことができたなら、今回もらった「読みにくいメール」も、結果的に良いことを生み出したことになります。
そして、もう一歩。今回は、自分が読みにくいメールの受信者である場合を考えてきましたが、自分が送信者の場合も考えなくてはね。私は、相手にとって「読みやすいメール」を書いているかな? …そんなふうに反省してみましょう。
単純なやり方としては、自分が送ったメールを自分で読み返してみること(もっと良いのは、送る前に読み返すこと)。それから相手に直接「自分の送ったメール、分かりにくいところはありましたか?」と聞くこと。
でも、自分の送ったメールが読みやすかったかどうかが最もよくわかるのは「相手が誤解した行動をとったかどうか」ですね。自分がメールで指示をして、相手が誤解した行動をとったなら、自分が出したメールは読みにくかったのかもしれません(もしくは、メールという手段は不適切だったのかもしれません)。
「まったく、この人は、しょうがないなあ。お仕事メールというのは、用件を最初に書くもんだよ!」と愚痴りたくなったときには——頭のスイッチをカチリと切り替えましょう。そして、
「このメールをきっかけにコミュニケーションを改善できないかな」
そしてさらには、
「自分のメールはどうだろう」
と思考を進めてみてはどうでしょうか。
(Photo by webtreats. https://www.flickr.com/photos/webtreatsetc/4293531423/)
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