質問

20代のエンジニアです。

私は、数学を高校からあきらめてしまいました。でも必要性を感じ、いまから勉強し直そうかと考えています。

数学の能力というものは大人になったいまからでも伸ばすことは可能なのでしょうか。

また、勉強し直すとしたらどの分野から始めればいいでしょうか。

結城浩のメールマガジン 2019年6月25日 Vol.378 より

回答

ご質問ありがとうございます。

数学の能力は、もちろんいまからでもどんどん伸びます。

本気で勉強し直すとしたら、中学・高校で「自分がわかっていると思っているところから復習していく」のは一つの方法だと思います。もういろいろ忘れているのではないでしょうか。

20代エンジニアということはお仕事をなさっていますよね。だとしたら「どの分野から」を考えるのも大事ですが「勉強する時間と環境を整える」方がはるかに大事です。

数学に限った話ではありませんが《継続は力なり》です。継続するための体制を整える必要があります。仕事に直接的に関係のない活動を継続的に行うための「時間」と「環境」を確保するのです。

「時間」を確保する

特に「時間」の確保が重要です。数学を勉強するのにどれくらいの時間が必要かは、あなたがどういうペースで学びたいかによるので一概にはいえません。とにかく無理なく継続できるような作戦を立てましょう。

いろんなパターンがあると思います。いくつか例を挙げてみますね。

　「平日は短めの時間で復習を中心にし、休日は長めに新しいことを学ぶ」
　「平日もがっちり勉強するが、休日はお休みにする」
　「毎週決まった曜日に、しっかり時間を取る」

たとえば、ある方は「朝イチ、出社前に会社近くのコーヒーショップで平日30分〜1時間、とにかく数学のことをする」という習慣を付けていました。そのように「時間」を確保してから、何を学ぶかを決めていくというのは無理なく継続できそうです。自分の仕事のパターンや性格と合わせてトライしましょう。

「環境」を整える

時間以外の「環境」として「わからなくなったときどうするか」は重要です。数学に詳しい先生役の知人を確保できればかなりいいですね（その人には継続的にお礼をしましょう）。

現在は社会人向けに数学教室などがいくつかありますので、それを利用するのも一法です。結城は個別に紹介はしていません。受けるサービスと料金には注意しましょう。

ぼんやりと「仕事で必要だから」だとなかなか続きません。仕事に関わる数学が登場する本を探して「これを理解できるようにする」といった具体的な目標を掲げた方がいいかもしれません。

同好の士も大事です。同じような境遇の人と、ネットでもいいので繋がるのは励みになります。

ブログなどで自分の学習状況を書くのはとてもいいと思います。自分の記録にもなるし、同好の士も見つけやすいし、疑問点を書いておいて、詳しい人にネットで助けを求めることもしやすいからです。

ネットを見ていると、不定期に開催される数学イベントもありますが、それはあくまで刺激を受けるためであって、勉強そのものは別途一人で静かに頭を絞る必要があります。

自著の宣伝

結城の本を宣伝しておきます。

『プログラマの数学 第2版』は、いわゆる理系の学校を出ていない「文系プログラマ」向けに書いたものですが、プログラマに限らずいろんな人に読まれています。ただし、数式はあまり出てきません。

高校の数学のさまざまな分野の様子を対話形式で振り返りたいなら「数学ガールの秘密ノート」があります。これは体系的に数学を学ぶものではありませんが、高校の数学で「引っかかるポイント」を解決したり、各分野でやっていることをつかむのにはいいと思います。

学ぶときに障害になるものは何か

以前、結城のTwitterで「数学を学びたいと考えている社会人限定でお尋ねします。学ぶときにもっとも大きな障害となっている（なっていた）要因は何ですか」と尋ねてみました。

2000票以上の回答結果は、ごらんのように

・時間（忙しさ、休日不足など）
・教師（相談相手、質問先など）

が非常に多いことがわかります。またツイートへのリプでは、

・モチベーション
・気力
・仲間
・能力
・テキスト

などが多数あがっていました。

まとめ

まとめます。

・数学の能力はいまからでも伸びます。
・まずは「どの分野」というより中学・高校の復習からはどうでしょう。
・継続できるように「時間と環境」の確保が重要です。

以上です。ご質問ありがとうございました。勉強を継続的にがんばってくださいね。

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