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妻から出された数学の問題を、13歳の長男と解いて学んだこと(思い出の日記)

※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです。

 * * *

午前中は礼拝。

定食屋さんでお昼。

本屋さんに寄ってから帰ってきてお昼寝。

それから部屋に掃除機をかけたりお皿を洗ったり。その後、晩ご飯のお弁当を買い出しに行く。合間に、プリントアウトしておいた原稿を読む。

夕方になって、家内が出し抜けにこんな問題を出してきた。

 「ねえ、あなた。
  ピザを直線で分割して二十個に分けるには、
  直線は最低何本必要か、わかる?」

面積も、形もばらばらでいいんだけど、と家内は言う。どうも、家内は、たけしのTV番組を見たらしい。

この問題を食卓でいきなり長男と競争で解く羽目になった。

結城はこの問題が『コンピュータの数学』の冒頭から二つめの例題ということまで覚えている(ちなみに一つめはハノイの塔)。『プログラマの数学』や『数学ガール』の著者としては、13歳の長男に負けていられない。むちゃくちゃ真剣である。

 φ(>_<) ヒー;;;;

幸い、長男と二人とも正解となった。

この問題は『数学ガール』の「僕」やミルカさんが語るセオリー通りに解けばいい。すなわち「小さな数で実験」して「漸化式を作って解く」のである。

今回、家内は《二十個に分ける》と具体的な出題をしたけれど、直線が《n本あったとき、ピザを最大何個の破片にわけられるか》と一般化して問うたとしても、それほど難しい問題ではない。

 * * *

長男は、結城が見せた書籍『コンピュータの数学』の値段が高いことに驚いていた。

 「こんなに高いの?!」

でもね、と私は息子に言う。

 「でもね、お父さんはこの本を1993年に買ってから、
  14年以上なんどもなんども読み返しているんだ。
  それに、この本に刺激を受けて、
  『プログラマの数学』や『数学ガール』を書くことができた。
  そういう意味では、本って、とても安いものだよ」

考えてみると『コンピュータの数学』を買ったばかりのときって、最初の漸化式のやさしい問題くらいしかわからなかった。《母関数》も《ゼータ関数》も《調和数》も《たたみこみ》もよくわからなかった。おもしろそうとは思ったけれど、自分で理解している感じはまったくしなかった。何しろ結城は、自分の言葉でちゃんと説明できないとわかった気がしないのだ。

でも、『数学ガール』を書いてみて、いろんなことがだいぶ理解できるようになった。ミルカさんや、テトラちゃんや、「僕」に教えてもらったと言ってもいいだろう。それは、とてもうれしい。学ぶことは楽しい、と素直に思う。2007年の6月に、まつもとゆきひろさんとの対談でも言ったけれど、結城は、人に読ませるくらいの品質の説明文(たとえば本)を書かないと、わかった気がしないのだ。

数学者などの専門家に比べたら、自分の理解なんて、大したことはない。

でも、考える喜びは、人との比較ではない。

他の誰の問題でもない。ほかならぬ《自分の問題》なのだ。

自分が考えなければ、自分は理解できない。

ここでは、他人は無関係。

自分が「なるほど」と言えるまで考えられるか。

その一点が問題なのだ。

それを心に留めるなら、考えることは楽しい。

 * * *

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※『プログラマの数学』
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※『数学ガール』
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※まつもとゆきひろ×結城浩,Rubyを語る(2007年)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070621/275509/

※2007年11月18日の「結城浩の日記」から。
http://www.hyuki.com/d/

※Photo by webtreats.
https://www.flickr.com/photos/webtreatsetc/4185326903/

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