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結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年10月16日 Vol.342

はじめに

結城浩です。

いつも結城メルマガをご愛読ありがとうございます。

今週はいよいよ『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』が刊行!

《サイン本》と《メッセージカード》を取り扱う書店のリストを以下に公開しました。お近くの書店をぜひご確認ください!

◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』《サイン本》《メッセージカード》取り扱い店舗情報
https://mm.hyuki.net/n/n4d951aecebb6

刊行に先立って、『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』の第1章がまるまるWebでいますぐ読める《Web立ち読み版》を公開しました。登録する必要もありませんし、もちろん無料です。Webブラウザで直接読むことができます。

◆《Web立ち読み版》『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』
http://ul.sbcr.jp/MATH-PAwkh

ぜひ、応援よろしくお願いいたします。

◆『数学ガールの秘密ノート/行列が描くもの』
https://bit.ly/hyuki-matrix

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日常の中の推理クイズ(問題編)

朝、洗面所に入ったら、いつもちょうど見える位置に置いてある小さな置き時計がくるりと壁の方を向けて置いてありました。当然、時刻が見えなくなっています。家人がその向きに置いたようですけれど、さてその理由はなんでしょうか。

解決編は少し後に書きます。

* * *

対数の話。

「対数なんか役に立たない」という意見をネットで見かけました。

役に立たないという方は「対数」が何かをよく理解していないで言っているのだろうと思います。

たとえば「その数には、桁を表すゼロが何個つくのか」や「大きな数を書き表したときに何桁になるか」というのは、対数の考え方を利用していることに他なりません。大きな数を書き表したときに何桁になるかというのは、大事な感覚ですよね。

対数には「掛け算を足し算に変換する」というすばらしい性質があります。たとえば、100×1000は100000になりますが、ゼロの個数に着目すると、2個+3個=5個という関係が成り立っていますよね。対数を使うと、100のようにキリのいい数以外であっても似たような計算ができるのです。

大きな数を扱うときには対数の考え方が必ず出てきます。対数はもともと大きな数を扱うために生まれたものですから。対数を考えないというのは、極論をいえば大きな数を扱うのをあきらめるということになります。

統計のグラフを見るときに目盛りがどうなっているかを調べるのは基本的な統計リテラシーですが、対数目盛りになっているかどうかの知識は極めて重要です。さもないと、ある量が倍増しているのか否かの判断をミスすることになるからです。

ということで、対数が何かを知っている人は決して「対数なんか役に立たない」とは言いません。

対数については『プログラマの数学 第2版』で楽しく解説しています。

◆『プログラマの数学 第2版』
http://www.hyuki.com/math/

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ものを食べる女の子の話。

結城はなぜか、駅のホームでものを食べている女の子をよく見かけます。

クレープやアイスを美味しそうに食べているのを見かけて微笑ましい気持ちになることが多いのですが、先日は驚きました。

女性がケーキを美味しそうに食べているのを見かけたからです。駅のホームで立ったままケーキを食べるというのもすごいですが、その女性は美しい金髪で、上品にフォークを使って食べていました。そのようすが印象的で、思わず二度見してしまいましたね。

「ガールズ&パンツァー」という作品に登場するダージリンという女の子を思い出しました。彼女は戦車の中で紅茶をたしなむのです。

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共和国の話。

ふと、Webサイトの「矛盾した紹介文」というものを思いつきました。

 このWebサイトは〇〇好きな人が集う〇〇共和国。
 そして管理人の私はこの国の王様ということになります。

この紹介文がどうして矛盾しているかというと「共和国」には「王様」がいないのが通常だからです。

はい、どうでもいい話ですね。

こういう、どうでもいい話というのはどこからやってくるのでしょう……

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憲法と人権の話。

ある人が職業を選ぼうとしているときに、その選択を妨害するようなことがあったらその行為は人権を侵害しています(職業選択の自由の侵害)。

ある人が何かを学ぼうとしているときに、それを妨害するようなことがあったらその行為は人権を侵害しています(学問の自由の侵害)。

ある種の罵倒の言葉は、しばしば人権を侵害する主張になります(生命、自由及び幸福追求権の侵害)。

日本国憲法を読むと、人権の基本的な理解が得られます。生命、自由及び幸福追求権は第13条。生存権は第25条。職業選択の自由は第22条。学問の自由は第23条。

憲法と人権を大事にしたい人は、自分の発する言葉に注意しましょう。その言葉は、誰かの人権を侵害する主張ではないでしょうか。その言葉は、憲法をないがしろにする主張ではないでしょうか。

マイノリティと差別の議論を見ていて、そんなことを思いました。

* * *

あおるセリフとマウンティングの話。

「あんたのやっている仕事なんか、誰でもできるよ」や「あんた、こんなことも知らないのか」などと人を馬鹿にしたり、あおったりするセリフがあります。それに対する返答を考えていました。

ケンカごしに返答すると、相手のあおる土俵に乗ることになるのでおもしろくないですね。実は「素直に返事する」のがいいのではないかと考えました。

たとえば、こんなふうになります。

 「あんたのやっている仕事なんか、誰でもできるよ」
 「はい!」
 (会話終了)

もしも自分のやっている仕事が、誰でもできるものならば「はい」と答え、そうではないなら「いいえ」と答える。それで会話は終了です。

素直に答えるというのは、汎用性高い返答であることに気付きました。

 「あんた、こんなことも知らないのか」
 「はい!」
 (会話終了)
 「あんたのやってる研究なんか自分にもできるよ」
 「はい!」
 (会話終了)
 「あんたが書いてる本なんて、誰だって書けるさ」
 「はい!」
 (会話終了)

もともと「あおるセリフ」というのは「あおる」ことが目的なので、あおられる側がそれに反発しなければマウンティングとして成立しにくいんですね。「売り言葉に買い言葉」とはよくいったもので、相手が売りつけてくる「あおるセリフ」は買わなければ何も起きないのです。

結城の発想は、ここから別の方向に進みました。

 「あんた、こんなこともできないのか」
 「ふふふ、教えてあーげない(はーと)」
 (恋の開始)
 「ふん!千尋っていうのかい?」
 「はい!」
 (湯婆婆との契約開始)

こういう、どうでもいい話というのはどこからやってくるのでしょう……

* * *

問い。

人生の喜びとは何か。

答え。

仕事の帰り道でふと立ち寄った百均の店で二十四色の色鉛筆を買って帰ったときに「この緑色、すごくきれいだね! これで何描くの?」と言われること。

* * *

日常の中の推理クイズ(解決編)

置き時計を壁に向けて置いてあった理由は「電池が切れて時計が止まってしまったので、電池交換するまで誤認を防ぐため」でした。奥さん賢いなあ、と思いました。

* * *

それでは、今回の結城メルマガを始めましょう。

どうぞごゆっくりお読みください。

目次

■文系大学生、暗号を学ぶのにどうすればいいか
■数学科、パソコンを買ってプログラミングをしたい
■才能か、努力か、経験か - 学ぶときの心がけ
■『数学ガール/ポアンカレ予想』に出てきた図形の描き方 - 本を書く心がけ
■人を好きになるとはどういう感覚か
■ファーストフィット - 再発見の発想法
■他人にゆさぶられない人生を歩むために

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文系大学生、暗号を学ぶのにどうすればいいか

質問

大学受験以来、数学の勉強をしていない文系大学生です。

あるきっかけで暗号学にとても興味が湧き、勉強しようと思い立ったのですが、何から手をつけていいかわからず迷っています。暗号学の勉強をする前にやるべき数学の分野を教えてください!

回答

ご質問ありがとうございます。

新しいことに興味が湧き、勉強しようと思うのはとってもいいですね!

数学に取り組む前に、暗号の概要を知るために拙著『暗号技術入門』はぜひお読みください。

◆結城浩『第3版 暗号技術入門 秘密の国のアリス』
http://www.hyuki.com/cr/

結城の本を読んだ後に読むのには、内容的にも難易度的にもサイボウズ・ラボの光成滋生さんの『クラウドを支えるこれからの暗号技術』がおすすめです。

◆ 光成滋生『クラウドを支えるこれからの暗号技術』
https://herumi.github.io/ango/

結城の本には数学がほとんど出てきませんが、光成さんの本には数学が少し出てきますので、感触をつかむのにいいと思います。そこまで読んで来てめげないようなら、結城の本や光成さんの本の参考文献をチェックしてもいいかもしれません。

数学専門書なども置いてある大きな書店に行きますと、暗号に関する書物はセキュリティの棚や数学の棚にたくさんありますから、いくつか眺めてみるのを強くおすすめします。「大学受験以来数学の勉強をしていない」だけだと、あなたがどの程度難しい本を読めるのか、誰にもわからないからです。

暗号に関わる数学ということですと、整数論、情報理論(符号理論)や群論といった分野名がすぐに思いつきます。でも、それらをすべてマスターしてから暗号を学ぶというのは、あまり現実的ではありません(それぞれが非常に深い分野ですから、そもそも「マスター」できるかどうか……)。

ですから、結城の本や光成さんの本で「自分が詳しく学びたいもの」の目星を付け、暗号に関する数学書でそれに関係しそうなものを見つけ、それを読むのに必要な数学は何だろうか、と逆に考えるのが無難だと思います。

暗号に限りません。何か新しい分野を自分が学ぼうと思ったら、大きな書店に行くのはおすすめです。そして、難しい本、易しい本をあちこち開いてみて、自分の興味や現在の知識に合いそうな本を探すのです。本には相性がありますので、他の人に紹介してもらっても自分にしっくりくるとは限りません。必ず、自分の目で見て判断することが大事です。

暗号について、あなたが求めているものとは違うかもしれませんが、日本には、「情報処理安全確保支援士試験」というものがあります。情報として一応お伝えしておきます。

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数学科、パソコンを買ってプログラミングをしたい

質問

自分は数学科の者です。

プログラミングというものをやってみたいのですが、数学書しか触れてこなかったので、どうすればいいのか分かりません。なので、結城先生に本などどう読めばいいのか教えていただきたいです。

また、パソコンを買いたいのですが、数値計算とプログラミングをやる上で具体的にどういうパソコンがオススメなのか教えていただきたいです。

長々と申し訳ございません。よろしくお願いします。

回答

ご質問ありがとうございます。

パソコンをこれから買うということですと、プログラミングを行う以前にいろいろとハードルがありそうなので、そちらを中心にお答えします。

コンピュータはポンと買っておしまいではなく、日々のメンテ作業や、新しいソフトのインストールや、トラブルシュートが必要になります。ですから、細かいトラブルが起きたときに相談できる人がいるかどうかが重要になりそうです。大学ではコンピュータの授業やガイダンスはないのでしょうか。

OSをどうするか、ソフトは何を入れるか、そもそもあなたが何をしたいのか、そもそもパソコンでどういうことができると思っているのか……そのようなことをていねいにあなたにインタビューしないと、ほんとうに的確なアドバイスは難しいと思います。

数学科ということですけれど、コンピュータに詳しくて親身に相談に乗ってくれる知人や友人はいないのでしょうか。相談に乗ってくれる方にアルバイト的にお願いしてマンツーマンでお話をするという方法は取れないでしょうか。

生協書籍部などでコンピュータやプログラミングの本を探してみてください。いろんなレベルの入門書もたくさんあります。どれが正解ということはないので、情報収集してください。

あなたが求めているのは一般的なコンピュータの使い方(WebとSNSとメール)以上のものですから、あなたの立場に似た人(つまりあなたのまわりにいる人)で詳しい人に尋ねるのは大切だと思います。

不安になる要素をたくさん書きましたが、現代で数理的な活動をしていて、自分のコンピュータを持っていないという選択肢は考えられません。結局コンピュータは投資のようなものですから、どこかの段階では「えいや」と進むしかありません。がんばってください。

以上です。

あまり役に立たない回答でごめんなさい。

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才能か、努力か、経験か - 学ぶときの心がけ

質問

数学で大切なのは才能ですか。それとも努力や経験ですか。

回答

ご質問ありがとうございます。

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