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作品に隠された構造を見抜く

質問

読書や映画鑑賞、芸術について質問です。

結城さんのnoteにあった「ナルニア国物語」の解釈や、文学作品、芸術作品の解釈はどのように見抜くのでしょうか。

ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」が持つ“父殺し”というテーマは著者自身の父の死、皇帝の死、国家体制の動揺、もちろん作品の中の父の死など、多重構造というか、現実の出来事や社会情勢を巧みに表現しています。自分は、そういった作品の解説を読んだり聞いたりするのではなく、自分で背景を読み取れるようになりたいと思いました。

もちろん、文章の巧さ、映像の迫力、絵画の繊細なタッチ等も大切だとは思いますが、僕は今は作品の構造とその背景に関心があります。

結城さんは作品を楽しむ際に何を考えているのでしょうか。解釈に正解はないと思いますが、知的に楽しむというか、表層だけでなく隠されたものまで想像して楽しむためにはどういった態度であれば良いのでしょうか。

お時間あれば回答いただけると幸いです。

結城浩のメールマガジン 2020年10月6日 Vol.445 より

回答

ご質問ありがとうございます。

ナルニア国物語の解釈というのは、こちらのページのことですね。

「ナルニア国物語」に限っていえば、別世界物語という視点はありふれた解釈だと思いますし、それが多重構造になっているというのも、C.S.ルイス自身がどこかで書いていたと思います。多少コンテキストは違うかもしれませんが。

要するに、あのページに書かれている「解釈」というのは、私がゼロから読み解いたものではありませんし、どこかでちらっと聞きかじったものを話しているだけです。ただし、それを十二歳の息子にもよく伝わるように表現するのは私のオリジナルかもしれませんけれど。

私は読書家ではありませんし、文学や芸術に造詣が深いわけでもありません。ただ「構造」というもの全般には興味を抱いてきました。大学時代から「かたち」というもの(現実世界の形ではなく、もっと抽象的な構造)と自分が関わる生き方をするという予感はありました。プログラミングを仕事にしていたこともそれに関係しているでしょう。

「構造」には関心がありますが、あなたがおっしゃるような「背景」にはあまり関心はありません。特に、作品が持っている社会情勢の背景に対する関心は薄いです。

ここまでがあなたの質問の前半部分のお返事になります。

ここからは後半へのお返事です。「構造」を見抜くにはどうするか。



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