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古今和歌集を読む

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古今和歌集(こきんわかしゅう)から親しみやすい歌を読みます。やさしい解説付き。ちょっぴり優雅な言葉の時間をあなたに。
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#壬生忠岑

春来ぬと人はいへどもうぐひすのなかぬかぎりはあらじとぞ思ふ

#壬生忠岑 (みぶのただみね) #古今和歌集 11 #jtanka 「春が来た」と世間では言うけど、鶯が鳴かないうちはまだ春は来てないだろうと思う。 「春来ぬ」は「春+来+ぬ」。「来(き)」はカ行変格活用「来」の連用形。「ぬ」は完了の助動詞。「春が来た」の意味。 「なかぬ」は「なか+ぬ」。「なか」はカ行四段活用「なく」の未然形。「ぬ」は打消の助動詞「ず」の連体形。「鳴かない」の意味。 「あらじ」は「あら+じ」。「あら」はラ行変格活用「あり」の未然形。「じ」は打消推量

月影にわが身をかふるものならばつれなき人もあはれとや見む(壬生忠岑)

壬生忠岑 月の姿に私を変えるなら、つれないあの人も「美しい」と思って——そして「かわいそうだ」と思って—— 私のことを見てくれるだろうか。 「月影」は、ここでは「月の姿」。 「ならば」は順接の仮定条件を表す「〜ならば」の意味。「ならば」は断定または性質を表す助動詞「なり」の未然形「なら」+接続助詞「ば」。「なれば」なら、順接の確定条件を表す「〜なので」の意味。この場合は已然形「なれ」+「ば」である。 「あはれ」は、ここでは「月のしみじみとした美しさ」と「あわれで気の毒