見出し画像

いまの自分にしか書けない文章を、書こう!(文章を書く心がけ)

心の物語」というコーナーを先日アップデートしていました。

このコーナーは、結城が1996年(当時32歳)から2006年(当時42歳)にかけて書いていた短いお話たちを集めたもの。ほとんどが一分も掛からず読めるような、ほんとうに短い「物語」です。

これらの物語を書いたのは、何か目的があったわけではありません。でもいま読み返すと、私としては、これらを書いていたときの自分の心情を思い「なるほど」と感じるところがあります。

当時は自分なりに思い悩むことがありました。仕事のこと、どんなふうに生きていくのか、世界のあり方と自分の関わりについてなど。正解のない、結論の出ないことをもやもやと考えていました。

そんな中で、これらの「心の物語」と題した文章を「やむにやまれず」書いていました。たぶん、これらの文章を書くことは、自分の心のために必要なプロセスだったのだろうと思うのです。「心の物語」というコーナー名もそれを象徴しているようですね。

 * * *

人生には「そのときにしか書けない文章」というものがあります。もっと経験を積んでから書くのではない。もっと勉強してから書くのでもない。経験を積んでから、勉強してから書いたのでは意味のない文章です。

それは「いまの自分」にしか書けない文章です。「いまの自分」が書かなければ、世界中の誰も書くことができない文章。未来の自分にも書くことができない文章というものがあるのです。

 * * *

文章を書くとなると、どうしても、「上手くなってから書きたい」とか、「下手な文章は恥ずかしい」という思いがわくものです。

しかし、いまは「文章が上手・下手」という話をしているのではありません。「自分の足跡を残す」という話をしているのです。自分が歩む足跡を残すのに、上手いとか下手とかいってもしょうがありません。

いま、ここに私は生きていて、他ならぬ私が言葉を選び、並べ、悩みと迷いのうちにリリースする文章があるのです。それは、世界中で私一人だけが書く、過去から未来までを通して現在しか書けない文章です。

書こう!書こう!書かなくては!

 * * *

文章を書こうとすると、足を引っ張る人が必ず現れます。必ずです。

「おまえの書くものに価値はない」
「もっとちゃんと勉強してから書いたら?」
「文章を書くなんて何様?」
「どうせ続けられないくせに」

そのような雑音をわざわざ伝えに来る人が現れます。ときにはその「人」は自分自身だったりします。

蹴飛ばそう!

そんな言葉は、心のうちで蹴飛ばしてしまえ!

 * * *

もしもあなたが文章を書きたいと思うなら。

なぜかはわからないけれど、やむにやまれず書きたい気持ちに押し出されるなら。

書こう。ただ、書こう。

自分を含めた誰かが足を引っ張ろうが、モチベーションを下げてこようが、否定的な言葉を投げかけてこようが。

とにかく、書こう。書くんだ。

「おまえの書くものに価値はない」

とにかく書かなければ価値があるかどうかすらわからない。だから、書く。

「もっとちゃんと勉強してから書いたら?」

書くこと自体が勉強なのだ。書き続けることが勉強なのだ。だから、書く。
 
「文章を書くなんて何様?」

私は私。いま、ここにいるのは他ならぬ私だ。だから、書く。

「どうせ続けられないくせに」

そんな言葉に惑わされたら続けられない。だから、書く。

 * * *

他者の批判に耳を傾けないということではない。他者のアドバイスを受け入れないという意味ではない。

とにかく書かなければ、批判もアドバイスもあったものじゃないという意味だ。まずは、書こう。まずは、形にしよう。

すべての話はそれからだ。

 * * *

あなたにネガティブな言葉を投げつけるネガティブ氏は、五年経っても十年経っても、ネガティブな言葉を投げつけてくるだろう。

もしかしたら十年後に、「この十年、何も書いてこなかったね」とネガティブ氏は言ってくるかもしれない。

そんな輩に振り回されず、あなたはあなたでしっかり書こう。五年でも十年でも、書き続けよう。あなたが書き続けた時間はあなたの宝物だ。誰にも奪うことのできない、あなたの宝物だ。

ネガティブな言葉を投げつけてくる人は、その人のロジックで動いている。受け入れるか否かはあなたの選択だ。

「この人のいうように、私なんかが文章を書いても意味ないな」

と考えるのか、

「いや、私は書き続ける」

と考えるのか。

それは、ネガティブ氏の選択ではない。それはあなた自身の選択なのだ。

さあ、書こう!

いまの自分にしか書けない文章を、書こう!

 * * *

結城浩はメールマガジンを毎週発行しています。あなたも購読してみませんか。

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2018年2月20日 Vol.308 より


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

いただいたサポートは、本やコンピュータを買い、さまざまなWebサービスに触れ、結城が知見を深める費用として感謝しつつ使わせていただきます! アマゾンに書評を書いてくださるのも大きなサポートになりますので、よろしくお願いします。 https://amzn.to/2GRquOl

結城浩です。うれしいなあ……感謝!(^^)
75

結城浩

書籍執筆者。著書に『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など。http://bit.ly/hyuki-mm にて「結城メルマガ」をnote配信中。https://bit.ly/girlnote にてcakes連載中。2014年度日本数学会出版賞受賞。

文章を書く心がけ

文章を書くときのちょっとした心がけやヒントをお伝えするマガジンです。
8つ のマガジンに含まれています