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仕事のオファーを断る(仕事の心がけ)

ずいぶん以前のことですが、ある人から「フリーランスは、オファーされた仕事を断ってはいけない。さもないと次の仕事が来なくなる」という主旨のアドバイスをもらったことがあります。

そのアドバイスを聞いたときには「そういうものですか」と答えましたが、それ以来ずっと「違うんじゃないかなあ」と思い続けてきました。つまり「オファーされた仕事は断ってはいけない」というのはまちがっていると私は思うのです。

それはなぜかというと「オファーされた仕事をすべて受ける」なんてことをしていたら、仕事がパンクしてあふれてしまうからです。そして、仕事がパンクしたら、結果的にオファーした依頼主に迷惑がかかることになってしまいます。ですから、オファーされた仕事は「すべて受ける」のではなく「できる/できないを十分に考えてから受ける」のが正しいあり方だと思います。

それは、いつでも楽にできる仕事だけを選びなさいという意味ではありません。さまざまな事情により「取らざるを得ない案件」もあるでしょうし、「少し背伸びをしてチャレンジする案件」もあるでしょう。それはオファーされた仕事と、自分の仕事のやり方によってさまざまです。でもそれは「オファーされた仕事を断らない」という固定的な考えとはずいぶん違うでしょう。

極端なことをいえば「オファーされた仕事を断らない」という態度は「私は、どんなにひどい状況であっても必ず引き受ける要員ですよ」として自分をアピールしていることになりかねません。人によってはそのようなアピールをして、しかもきちんと仕事をこなせるのかもしれません。しかし、私の場合はそういう仕事の仕方をしたら破綻してしまうでしょう。

自分に仕事がオファーされた場合は、オファーされたことに感謝しつつも十分に検討し、その上で受ける/受けないを判断し、いったん受けたら最善を尽くす。そして依頼主なりエンドユーザ(読者さん)の信頼を少しずつ得ていく。仕事を進める上では、そのような心がけが大事だと私は思っています。

もちろん、判断のミスというものはいつもありえます。想定外のことも起こるでしょう。思ったほどはうまくいかなかったり、予定していたよりも大変な事態になることもあるかもしれません。それでもできることは「現有戦力で最善を尽くす」ことでしょう。

どのような戦略で自分の仕事を積み上げていくのか、それはフリーランスの場合、ひとりひとり違います。「現在自分は修行中の身だから勉強のために」と考えて、すべての仕事を受ける人もいるでしょうし、「あまりチャレンジはせずにできるだけ過去と同じパターンで進もう」と判断する人もいるでしょう。

そのように「自分の仕事の全体像を自分でデザインする」ことは、フリーランスの楽しさの一つとも言えます。自分で自分にどういう仕事を与えるか。最初は選択肢が狭いかもしれないけれど、少しずつ間口を広げ、深めていくこと。フリーランスで働くことは、会社という組織で働くこととは違う楽しさ(と苦労)があると思っています。

とはいえ、そんなふうに「自分の仕事の全体像を自分でデザインする」などという余裕は実際には少ないでしょう。我が身を見てもいつも、あたふた・ばたばたしているのが実情です。ただ、ときには「自分の仕事を自分でデザインする」というイメージくらいは持っていたいものです。

どっぷりと仕事の内容に浸かるタイミングもあるし、ちょっと身を引いて「そもそも、自分はフリーランスでこういうことをやろうとしてたんだっけ」と自問するタイミングもあります。その両方のタイミングできちんと考えないと、心のどこかが不健康になりそうです。

ここまで「フリーランス」のこととして書いてきましたが、実はどんな仕事にもあてはまることかもしれませんね。

・あるときには仕事にどっぷり浸かる。
・あるときには仕事を振り返る。

その両方はどんな仕事でも大切なことといえそうです。どっぷり浸かって突っ走ってばかりいると、世界の変化や自分の変化を見逃してしまう危険性があります。

ときには仕事を振り返り「このままでいいのかな。ちょっと違う一歩を進めなくていいのかな」と考えるのは大切です。

「オファーされた仕事を受けるかどうか」という話題から始まって、仕事というものについて思うことを書いてきました。具体的にある仕事がオファーされたときにそれを受ける/受けないは一つの判断にすぎませんし、単純にお金の事情や好みの話かもしれません。でも、その背後には自分の仕事の現状と未来が多かれ少なかれ絡んできます。言い換えるなら、一つの仕事を受けるかどうかは「私は、これからどう生きるのか」という問いかけに絡んでくるといえるでしょう。

「オファーされた仕事を受けるかどうか」とは大変ベタな問いです。しかし、考えを進めてみると実は「私は、これからどう生きるのか」という大切な問いへつながっているのではないかと思います。

 * * *

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2014年1月7日 Vol.093 より

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結城浩

書籍執筆者。著書に『数学ガール』『プログラマの数学』『数学文章作法』『暗号技術入門』など。http://bit.ly/hyuki-mm にて「結城メルマガ」をnote配信中。https://bit.ly/girlnote にてcakes連載中。2014年度日本数学会出版賞受賞。

仕事の心がけ

仕事をするときにちょっと心に留めたいことを集めていきます。いわゆるお仕事だけではなく自分の活動全般に役立つヒントです。