老いに備える知的生活と作業ログ(仕事の心がけ)
年を取ってくると興味関心が弱くなる。興味関心の範囲が狭くなる。興味関心に従って行動する力も弱くなる。
さらに「よし、やるか!」と踏ん切りを付けて始めることがなかなかできない弱さもある。その弱さをもう少しパラフレーズしよう。それは、やり始めれば進むことがわかっているけれど、先がどうなるかわかってしまうと急に動けなくなるという弱さだ。
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以前「ルーチンワークを創造して、一冊の本を書き上げる」という文章を書いた。仕事をするときには、頭を使って仕事の進め方をデザインし「あとはルーチンワークをこなすだけ」にしてしまえ!という話である。
◆ルーチンワークを創造して、一冊の本を書き上げる(本を書く心がけ)
しかし、このやり方がかえって害になる場合もあるようだ。老いのせいかもしれないけれど「あとはこれをこなすだけ」になってしまうと、急激にモチベーションが下がってしまうことがある。
いつもそうなる、というわけではない。自分自身が、自分の成果物なり最終結果を見たくてしょうがないときには、さまざまな障害を吹き飛ばす勢いで作業を進めたくなる。プログラムが形になりはじめ、完成間近なときにこの現象が起きる。このときにはモチベーションなんて心配しなくていい。Just do it! ただ進めばいいだけである。
でもしばしば、先を見切ったような気持ちになり、「結局こういって、こうなって、こう決着するな」などと考えてしまう。そして「よし、やるか!」という踏ん切りが付かない。やればいいとわかっていても、できないことがある。
そんなとき、どうすればいいんだろうか。
うまく踏ん切りがつけられず「やればわかっているけど、できないんだよう!」というときにはどうすればいいんだろうか。
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こんな方法はどうだろう。
「何はともあれ、決まった時間だけ、その作業を行う」
ここで大事なのは、作業開始時のモチベーションとは無関係に作業開始する点だ。自分のモチベーションがどうであれ、かまわない。
・決まった時刻が来たらその作業を始める。
・過去の進捗の有無は気にしない。
・終了時刻が来たらやめる。
この方法は、次回の作業を開始するときの「敷居を下げる」効果もある。ちょうど、自分が作業を進める機械になったような気持ちになって、作業に着手するのである。
これを継続するという方法はたいへん効くのではないだろうか。というか、結城の場合にはとてもよく効く。
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さらにそのとき、「作業ログ」を書くのがとてもいい。たった一行でもかまわない。自分の作業について書き残すのである。
「何をやったか」を書くのもいいけれど「老いに備える知的生活」として特に大事なのは「この次の作業時間で何から始めるべきか」も忘れてはいけない。もしかしたら「何をやったか」よりも大事かもしれない。
それは、老いてくると「記憶力が落ちてくる」のは当然だけれど、それと同時に「なすべき作業を頭にロードする」のにも時間がかかるようになるからだ。作業ログを書き、それを次回の作業開始時に読むことで、ロード時間を短縮するのである。
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以上「老いに備える知的生活」と作業ログの話でした。
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よろしければ、以下もお読みください。
◆老いに備える知的生活(結城浩ミニ文庫)
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結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2016年5月17日 Vol.216 より