相手はきっと覚えていない(コミュニケーションのヒント)
※全文を公開している「投げ銭」スタイルのノートです。
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こんにちは、結城浩です。
今日は「口頭で相手に指示をする」ことを考えてみましょう。会話による情報伝達ですね。
お仕事で、こんな指示を出すことがあります。
「じゃあ、その件は来週の月曜まで。プログラムもつけてメールで送ってください。そのときには機能Aを入れておいて欲しい」
こんなふうに口頭で指示を出したとしましょう。来週になって、どんなことが起こると思いますか。
・月曜日になったけれど送ってこない
(え、再来週じゃありませんでしたっけ)
・メールで送ってこない
(え、CDに焼くんですよね)
・プログラムをつけてこない
(え、仕様書があればよいんですよね)
・機能Aが入っていない
(え、機能Aは検討だけすればよいんですよね)
ここに書いたようなトラブルのうち、「いずれも」起こってしまう可能性があります。
人間の記憶力とは、あてにならないものです。それは相手が信用できるかどうかとは別のことです。いくら良い人であっても、忘れたり記憶違いをするのはよくあることです。
私は人の記憶力をあまりあてにしないように注意しています(自分自身の記憶力も含めて)。だから、口頭でささっと伝えた内容は「相手はきっと忘れるな」ということを前提に仕事をするように心がけています。
ここでもまたコミュニケーションの基本である「確認」が重要になりますね。
「きっと、これは、伝わってないはずだ」
「きっと、あのことは、忘れているはずだ」
こんな風に考えて確認をするのです。
それでは、確認はどんなふうにしたらよいでしょうね。
口頭で尋ねた直後に「わかりましたか?」と確認するのはあまり意味がありません。たいていの場合「わかりました」と返事が返ってきておしまいになるからです。
確認は、口頭以外の《別のチャンネル》で行います。たとえばメール。口頭で指示を伝えた次の日に、以下のようなリコンファーム+リマインドのメールを出します。
先日口頭でお伝えした○○の件ですが、以下のようにまとめました。ご確認の上お返事ください。
・〆切は来週の月曜です。
(XX月XX日)
・プログラムはメールで送付してください。
(前回まではCDで送ってもらいましたが今回からメールでお願いします)
・機能Aを入れてください。
(検討だけではなく実装もお願いします)
同じことを二回言い換えて書いていることに注意しましょう(「月曜」と書くだけではなく日付を具体的に書くなど)。このようにして確認すると、記憶違いのトラブルはかなり減らせます。また、自分自身の備忘録+チェックリストにもなります。
考えてみると「口頭で連絡」と「メールでリマインド」というのも同じことを二回言い換えているようなものですね。
では、まとめましょう。
・口頭で連絡しただけのとき「これは伝わってないな」と判断する
・別チャンネルを使ってリマインドする
・同じことを言い換えて確認する
これを怠ると、しばしば「言った言わない」のトラブルになります.。
×「え、打ち合わせのときは0時過ぎていたから、来週月曜と言ったらXX日のことでしょ」
×「え、メールでプログラムも送付って言ってましたか? CD送付した連絡をメールでしろということなんでしょ?」
×「え、機能Aは検討だけで良いって言ったじゃないですか。あなた、そう言いましたよね!」
「言った言わない」のトラブルになったら《両成敗》というのがコミュニケーションの基本です。
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