結城浩
《できあがり》まで持っていこう(文章を書く心がけ)
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《できあがり》まで持っていこう(文章を書く心がけ)

結城浩

文章を書いていると、次のことをいつも(いつも)痛感します。

これをこんなふうに書けば《できあがり》だと分かること」と「実際に《できあがり》まで持っていくこと」との間には、とんでもなく大きな隔たりがある。

別の言い方をすると、これをこんなふうに書けば《できあがり》だと分かるのは、まだ道半ばの状態ということです。道半ばどころか、ようやくスタートと言ってもいいくらい。旅行の計画が立った状態はまだ旅行に出かけていません。それに近いですね。

だから結城は「どうしたら文章を書けるようになりますか」や「どうしたら本を書けますか」と尋ねられたときに毎回「まず書きましょう」と答えます。まずは書き始め、そしてどんなに短いものでもいいから、とにかく《できあがり》まで持っていくことが大きな一歩となるからです。

文章に限った話ではありません。何かを《できあがり》まで持っていった経験がある人の多くはここまでの話に賛同してくれると思います。こうすれば《できあがり》だと分かることと、実際に《できあがり》まで持っていくことは違う。まったく違う。

大事なことなので、もう一度。

こうすれば《できあがり》だと分かることと、実際に《できあがり》まで持っていくことは違う。まったく違う。

《できあがり》まで持っていくためには、無数に生じる現実的な問題に対して決着をつけなくてはいけません。その決着は必ずしも理想通りいかないかもしれません。矛盾した複数の要求のうち、どれかを選択する必要があるかもしれません。時間の制限があるかもしれません。しかしながら、ともかく決着をつけなければ《できあがり》まではたどり着けないのです。

《できあがり》まで持っていくのは、夢を現実にする作業そのものです。夢が夢であるあいだは、いくらでも矛盾することができます。あちこちに穴があってもかまいません。それからまた夢には制約が何もありません。ですからいくらでも勝手なことを考えることができます。でも現実はそうはいきません。矛盾に解決を与え、厳しい制約内でやりくりをしなければならないのです。

《できあがり》になったものは評価を受け、しばしば批判されます。それもまた《できあがり》に至ったものが現実の存在である証拠です。夢を夢のままにしておけば、評価されず、批判もされません。形になっておらず、他の人に見えないからです。

どんなに小さなものでも、実際に《できあがり》まで持っていった人に対して、結城は敬意を抱きます。それは夢を現実に変えた人だからです。もちろんできあがったものには良いものもあればそうではないものもあるでしょう。でも、ともかくも「それ」は形になりました。現実に生み出されました。その価値は、はかりしれません。

結城は、夢と現実の隔たりに悩んでいる人にエールを送りたい。こうすれば《できあがり》だと分かっているけれど、なかなか《できあがり》まで持っていけない人、夢と現実の隔たりがなかなか突破できない人に、強く応援のエールを送りたい。そこを突破するのは、すごく大変なことであり、苦労するのも無理はありません。ものすごくたくさんの人がその隔たりに気づかず、また少なからぬ人がその隔たりを越えられず、引き返してしまったはずです。

がんばってください。

何とかして《できあがり》まで持っていきましょう!

* * *

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◆「もっと学んでからにしよう」と思わなくて、本当によかった

結城浩のメールマガジン 2020年11月17日 Vol.451 より

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結城浩
本を書く生活がもうすぐ30年目。著書は『数学ガール』『プログラマの数学』『暗号技術入門』『数学文章作法』など50冊以上。活動内容は https://mm.hyuki.net/n/n5f00c9cd281c をご覧ください。2014年度の日本数学会出版賞を受賞しました。