相手を説得する(仕事の心がけ)
質問
質問に対して結城さんが回答する文章は、論理的で説得力があるように感じます。
結城さんの論理的な思考は何によって養われたのでしょうか。
もしも論理的な主張をしても説得されない態度を取る相手がいたとしたら、結城さんはどのように対処しますか。
結城浩のメールマガジン 2020年1月21日 Vol.408 より
回答
ご質問ありがとうございます。
私は、質問に対して出来るだけ誠実で正直な気持ちで回答しようと心がけています。別の言い方をするなら、読み返してみたときに「確かに私はこう思う」と感じることを回答しています。もしも私の文章に説得力があるとするなら、そこに一因はあると思います。つまり、少なくとも書いている結城自身を納得させている回答だから、と。
あなたの質問に「論理的思考はどう養われたか」とありました。「論理的思考」といってしまうと話が広がってしまいますね。私は自分の文章を正直に書いて、読み返して、納得がいくかどうかを判断しているだけだと思います。その意味では、ことさらに「論理的思考」をしているわけではありません。何かしら特別なことをやったわけではなく、自分の価値観を育むものとして、これまでの人生すべてを通して養われたのでしょうね。
「人生すべて」なんていうと、それもまた収拾がつかなくなっちゃいそうです。うーん……たとえば「文章の執筆」はそれ自体が自分を養うことになります。文章を書く。それを読み返す。読みながら「本当かな?」「その理由は?」「大事なことを言い忘れてないかな?」のように自問自答します。日々自問自答することは、あなたが求める「論理的思考を養う」ことに通じそうです。
説得されない相手にどう対処するか。まず大事なのは「自分と相手は違う人間である」事実を忘れないことです。自分と相手は違う。ですから、自分が何を言おうとも、自分が何をしようとも、相手がどう考えどう行動するかは相手の話になります。そこを混同すると苦しくなります。
他人の考えや他人の気持ちはコントロール不可能なのです。それをどうにかしようとすると、とても苦しくなります。相手のことを思いつつ、自分の最善を尽くすのは自分の話。相手がそれをどう感じ、どう行動するかは、相手の話。そこを明確に分けましょう。
また、相手を「説得」しようとすると意外にうまく行きません。それよりは相手に「納得」してもらうことが大事ですね。「説得よりも納得」はよく言われることです。おうおうにして人は「自分は論理的に説明しているんだから、それで説得されないのは相手が悪い」と思いがちです。でもほとんどの人間はそんなふうにできていません。
相手を説得するのではなく、相手に納得してもらい、相手が相手自身の意思で動く。そのように仕向けることしかないと思います。そのためには《相手のことを考える》という愛の原則が大事になるのでしょう。
そんなふうに思います。
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