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確認チャネルの品質確保(コミュニケーションのヒント)

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こんにちは、結城浩です。

「コミュニケーションのヒント」のコーナーです。

良いコミュニケーションのためには「確認チャネル」は欠かせません。

確認チャネルというのは「いま私が言ったこと、わかりましたか?」と確かめるための通信経路のことです。通信経路といってもそういう回線が本当にあるわけではなく、比喩的な概念ですけれどね。

対話する相手との間に、しっかりした確認チャネルが確保できていると、コミュニケーションの質を高く保つことができます。しっかりした確認チャネルとは、何度でも相手の感情をそこねることなく「わかりましたか?」あるいは「これでいいですか?」と聞けるということです。

 ○しっかりした確認チャネルが確保されている対話の例:
  「このファイルは消してもいいですか?」
  「はい、いいですよ」

 ×しっかりした確認チャネルが確保されていない例:
  「このファイルは消してもいいですか?」
  「何度いったらわかるんだよ。いいに決まってるじゃないか!」

「当たり前のこと」を確認しようとしたときにどなられるのは危険信号です。ある日、ある時、もう一度確認すれば良いところで、つい「この間どなられたからなあ。改めて確認するのはやめとこうか」と躊躇してしまう可能性が高くなるからです。でも、当たり前のことを確認しようとすると「どなる人」ってけっこう多いんですよね。安心して、気軽に「わかりましたか?」「いいですか?」と確認できるようなチャネルを確保できるとよいのですが。

話す相手と自分との間に「同じ目的のために進もうね」という合意が本気でできていると、確認チャネルの品質を高く保つことができます。コミュニケーションを取る相手と向かい合うようにして敵対関係になるのではなく、相手と並んで共通の目的に向かうようにできれば良いですね。

ここまでの話、わかりましたか?

以下は、上で述べた話の繰り返しです。

私が本の原稿を書き上げて、編集者に渡すと、編集者はそれを読んで、問題点を指摘します。「この表現はわかりにくい」「この文章は論旨が矛盾している」という具合に。そして、編集者からの指摘に対して著者である私は適切な対応(書き直す・指摘を却下する・さらに調べる…)をする必要があります。

編集者に対応するとき、著者は指摘に怒ってはいけません。お互いに良い本を作ろうという共通の目的に向かって仕事をしているんだから、わかりにくい部分を指摘するのは当然。疑問点が出たら確認するのも当然なのです。

もしも、著者が「そんな些細なことを指摘するな!」と怒ってしまったらどうなるでしょう。それは上で述べた「確認チャネル」の品質を下げてしまうことになります。なぜなら、編集者がちょっとした問題に気づいたとき、「この間、些細なことを指摘したら怒られたなあ。今回の問題もたいしたことはなさそうだから、指摘するのはやめておこう」と考えてしまう危険があるからです。

些細な問題を指摘されたときには、単に「それは些細な問題ですから大丈夫です」と返せばよいはずです。わざわざ怒って確認チャネルの品質を下げるのは愚かなこと。確認チャネルの品質を下げていると、いつか、どこかで「なぜそんな大事なことを確認しなかったのか!」という事態になりかねません。

どんな細かいことでも、安心して確認し合える関係。それは非常によい関係ですね。

それは、品質の良い「確認チャネル」が確保できている状態なのです。

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