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《勘違い》で本を生む/プログラミングの授業についていけない/指摘を受けると涙/未知の問題が解けない/主観とハードウェア/

結城浩の「コミュニケーションの心がけ」2022年11月8日 Vol.554



はじめに

こんにちは、結城浩です。

『数学ガールの秘密ノート』第16作目の話。

先週、ようやくレビューアさんに第2章を送ることができ、先週末から第3章に入りました。うれしいですね。

一章ずつ進むのはもどかしいといえばもどかしいのですけれど、それが歩みというものなのでしょう。その一歩一歩を楽しんでいきたいと思います。


AIシステムで作る画像の話。

この結城メルマガでは何回かに渡ってAIシステムで作る画像の話を紹介しました。

◆Vol.541: DALL-E: 短い文章から驚くほどリアルな画像を作るAIシステム

◆Vol.545: AIシステム「midjourney」が作り出す美しい画像の世界

◆Vol.549: AIシステム「Stable Diffusion」で楽しむ美しい画像の世界

結城は現在でもこれらのシステムを相互に活用して画像を作っています。

これまでに作ったものは、以前はTwitterの「モーメント」にまとめていましたが、最近のものはずっと「ArtStation」というサイトにまとめています。少しずつ増え続けて現在は100枚近い枚数になっています。ご笑覧いただければ感謝です。

◆ArtStation - Hiroshi Yuki

結城浩のArtStation

https://www.artstation.com/hyuki0000

* * *

それでは今回の結城メルマガもどうぞごゆっくりお読みください。



目次

  • 実り多い《勘違い》が本を生み出している - 本を書く心がけ

  • 大学で学ぶプログラミング言語の授業についていけない - 学ぶときの心がけ

  • 大学生、指摘を受けるとすぐに泣いてしまう - コミュニケーションのヒント

  • 未知の問題を解くことができない - 学ぶときの心がけ

  • 自分の主観とハードウェア - 散歩しながら考えたこと



実り多い《勘違い》が本を生み出している - 本を書く心がけ

結城はWeb連載「数学ガールの秘密ノート」を毎週金曜日に更新しています。そして十週分の記事(1シーズン)をまとめることによって一冊の本ができあがります。

◆Web連載「数学ガールの秘密ノート」

たとえば先日上梓した『数学ガールの物理ノート/波の重ね合わせ』の場合のお話をします。

Web連載で「波」について書いたシーズン15は2016年1月8日から十週間続きました(第141回から第150回)。そしてそれから6年後の今年2022年に『波の重ね合わせ』として本にまとまりました。6年も過ぎていたのですね。現在のWeb連載はシーズン38。こちらもずいぶん進んでいます。

Web連載としてすでに書いたものがあるんだから、それをまとめれば一冊の本ができあがり……とはいきません。ぜんぜん違います。

Web連載として書いたものを本にまとめるとき、宣伝文句としてはこんなふうに紹介します。

書籍化にあたっては、加筆修正をたくさん行い、練習問題や研究問題も追加しました。

これはウソではありませんけれど、あくまで定型文の一種です。実際のところ「加筆修正をたくさん行い」という次元じゃないくらい加筆修正と再構成をしていますね。

正直言うと、本としてまとめ始める前には「ゆーて、Web連載としてある程度はまとめたものだから、すぐに書けるでしょう」という考えがないわけではありません。しかしながら、本としてまとめ作業を進めていけばいくほど「波」というものがとても深い内容を含んでいることを痛感しました。

「波」なんて、身近なものだし、Web連載の内容もそれほど難解なことを書いているわけではありません。でも、いざ本としてしっかりまとめようと思うとぜんぜん単純にはいかないのです。

何度も「どうして過去の私は、この本を『すぐに書けるでしょう』などと思ったのか!」と憤ることがありました。

もっとも「この本なら、すぐに書けるでしょう」という《勘違い》がなければ、本を書き始めようとすら思わないかもしれないので、《勘違い》も大事なのですけれどね。

今回の『波の重ね合わせ』は結城の60冊目の本になります。毎回毎回「この本なら、すぐに書けるでしょう」という《勘違い》で書いてきたのかもしれません!

結城は現在、次の本『数学ガールの秘密ノート』第16作目(NOTE16)の第3章に取り組んでいます。そして今回も書き始める前には「この本なら、すぐに書けるでしょう」と思ったのですが「どうして私はそんなことを思ったんだろう」と思う日々です。

これまでもずっとそうだったので、きっと今後も同じことが繰り返されるはずです。

「この本なら、すぐに書けるでしょう」というのは、たいへん実り多い《勘違い》なのですね!

◆2022年『数学ガールの物理ノート/波の重ね合わせ』

◆2016年「波を作る(前編)」- Web連載「数学ガールの秘密ノート」

◆連載から書籍を作るということ




大学で学ぶプログラミング言語の授業についていけない - 学ぶときの心がけ

質問

結城さん、こんにちは。

私はいま大学でC言語を学んでいるのですが、先生は「レジスタに……」や「IPアドレスが……」のように、学生にPCの知識がある前提で話を進めます。

やはり、そういうPCの知識がないと、プログラミングはできるようにならないのでしょうか

私はプログラミングやPCに詳しく触れるのが初めてで、まったく知識がないため、ついていけません(ごちゃごちゃ言う前にやれって思うかもしれませんが……)。

回答

ご質問ありがとうございます。

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