社会に出る前に知っておいてほしいこと(仕事の心がけ)
質問
結城先生、私は『Java言語で学ぶデザインパターン入門』という本で結城先生に出会いました。
そして先生がさまざまな能力や知識をお持ちであることを知りました。数学や、プログラミングや、文章の校正や、物書きや、企画立案などのことです。
そこで質問なのですが、このようにマルチなインプットやアウトプットを行うための時間はどんなふうにして確保しているのでしょうか。
また、結城先生が社会に出る前にやっていたことや、私が社会に出る前にやっておいた方が良いと思うことをお聞きしたいです。なお、私は学部四年の情報科学科です。
回答
たいへんおほめいただき感謝です。
しかしながら、正直なところ結城は一介の物書きに過ぎず、それほど突出して専門的な能力が高いわけではありません。もちろん、能力がないわけではありません。考えることは好きですし、自分が考えたことを言葉に変換する能力は高いと思います。また、継続する能力もあります。
結果として、書く仕事を25年以上も継続してきましたので、その積み重ねによって、あなたがおっしゃる「マルチなアウトプット」が形になっているのでしょう。《継続は力なり》ですね。感謝なことです。
さて、インプットとアウトプットの時間ですが、私は毎日仕事をしていますので、その時間で読んだり書いたりしています。だいたい毎日コンスタントに何かを書きながら勉強しています。その様子の一部はしばしば私自身がツイートしていますし、「結城メルマガ」でもいろんな形で文章になっています。
《継続は力なり》といいましたが、もともと私は毎日同じことをするのが好きなので、努力して継続しているわけではありません。継続するのが楽なのですね。
社会に出る前にやっていたこと、やった方がいいと思うことに答えるのは、なかなか難しいですね。あまり私は先々のことを考えないタイプで、いつも「次の一歩」だけを考えています。ですから「先を見越してこれをやっておこう」という発想に欠けていることが多いです。
また、目標設定を高くするのも苦手です。だいたい「自分にはこれができそうだな」というあたりを狙います。自分にできそうなことを、ただし徹底的にやるという仕事の進め方が好きです。
あなたがやっておいた方がいいと思うこと……うーん、細かい学びやテクニックや知識などはすぐに古くなるのでどうでもいいです。
私は《原則》が好きです。何か困ったらそこに立ち返ればいい、という原則が大好きです。原則を念頭に置いて、現状に適用して対処する。これです。
たとえば、結城が非常に非常に大事だと思うのは《わかったふりをしない》という原則です。ポジショントークや大人の事情として他者にいうならまだ許容範囲ですが、少なくとも自分自身に対して《わかったふりをしない》こと。
《わかったふりをしない》は、知的生活者にとっての生命線です。自分に対して《わかったふり》をするようになったら、どんなテクニックがあってもおしまいです。なので《わかったふりをしない》という習慣を付けましょう。
仕事をする上で大事になるのは《相手のことを考える》という原則です。結城はこれを《愛の原則》と呼んでいます。これは万能です。人生を切り拓く秘訣。魔法の鍵。それが《相手のことを考える》という原則です。あなたがどんな仕事をするにしても、この原則、秘訣、鍵を忘れないでください。
《相手のことを考える》という原則を、著作に適用すると《読者のことを考える》という執筆の原則になります。そして、これを忘れなければ、自分の能力にあっただけの成果を必ず生むことができます。必ずです。
ということで、あなたへのプレゼントとしてパッケージングするならば、
という二つの原則になります。リボンをつけてプレゼントいたします。
ご質問ありがとうございました。
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結城浩はメールマガジンを毎週発行しています。