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本を書く心がけ

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結城が本を書くときに心がけていることや、手書きの執筆メモなどをお届けするマガジンです。
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記事一覧

『数学ガール/ポアンカレ予想』の書籍執筆で「大手術」をしたときの思い出(本を書く心がけ)

『数学ガール/ポアンカレ予想』を書き上げるまでにはたくさんの苦労や重要な判断がありました。たぶんその中で最大級の判断の一つは第3章の「大手術」でした。 「大手術」というのは具体的にいうと、初校から再校のあいだで第3章の約半分の書き換えを行なったことです。初校が出た後でこういう大量書き換えは、やってはいけないのが普通です。編集もやりなおしになるし、組版にも多大な影響を与えてしまうからです。 初校のあとの大手術がよくないのは百も承知だったのですが、あえてわがままを通させてもら

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断片は作品ではない(本を書く心がけ)

結城は仕事のメモを保存するためにEvernoteを使っています。自分が思いついたことを書いておいたり、参考書のスナップショットを取ったり、Webサイトのクリッピングを行ったり。Evernoteには数万個のノートがあります。 自分のEvernoteの中には「新しい本のアイディア」というノートブックがあります。そこをのぞくと、おもしろい本になりそうな設定やアイディアがぎっしり見つかります。何しろ、結城自身が長年集めてきたものですから、自分で読んで興味を引くものばかりです。 「

執筆作業と別世界への旅(本を書く心がけ)

本を執筆していると、いつのまにか別世界へ移っていることがあります。 別世界へ移るというのは比喩です。いわゆる「ゾーン」や「フロー」と呼ばれる状態に入り込むことです。そこには深い喜びがあります。これは、本を執筆することの喜びの一つかもしれません。プログラミングをしているときも似たような現象があります。 執筆に夢中になって別世界へ移る。この表現で興味深いのは「場所」にたとえることが自然に感じるという点です。 自分という存在が「こちらの世界」を離れる。つまり、現在いる部屋や家

構想中の本、あきらめるかどうかの判断(本を書く心がけ)

質問結城先生に質問です。 本を書こうとしている者です。 今まで抱いていた構想を企画書にしている途中で、自分にはその本を書く知識や経験が足りないように思えてきました。 構想自体もひとりよがりで、売れないもののように感じます。 今回は勉強を始める機会にして、企画書をあきらめようかとも思っています。 先生にもそのようなときがありましたか。 また、そのようなときをどうやって乗り越えましたか。 回答ご質問ありがとうございます。 本の構想を練って企画書にしている途中で、あ

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レビューアさんはどうやって選ぶ?(本を書く心がけ)

質問「数学ガール」シリーズの執筆では、複数のレビューアさんに原稿をチェックしてもらっているとお見受けします。ところで、そもそも最初にレビューアさんに見てもらおうと思ったのはなぜでしょう。 また、最初の人選はどうしたか、最初のコンタクトはどうしたか、などが気になります。 回答ご質問ありがとうございます。 はい、結城は本を執筆するときに、複数のレビューアさんに原稿を読んでもらっています。レビューアさんに読んでもらった本は、概算になりますが、25〜30冊くらいになります。

本を届けてください

結城が書いている「数学ガール」には「ポリアの問いかけ」がよく出てきます。これは数学者ポリアが『いかにして問題をとくか』という本に書いた「私たちのリスト」をもとにしているもので、問題を解くための手がかりとなる問いかけや指示のことです。 「定義にかえれ」 「与えられているものは何か」 「求めるものは何か」 このような問いかけは数学の問題を解く際にきわめて有益です。実際、これらは数学に限った話ではなく、考えることの本質に迫る問いかけだと思います。 「ポリアの問いかけ」は「

「繰り返しに耐える」ということ(本を書く心がけ)

「繰り返しに耐える」ということをよく考えます。 結城浩のメールマガジン 2017年7月18日 Vol.277 より 結城はマジックが好きで、特にテーブルマジックが好きです。観客の目の前でマジシャンが演じるいわゆる「クロースアップマジック」が大好きです。 選んだカードを当てる。デッキの中に入れたはずのカードが一番上に現れる。さっきサインしたばかりのカードが、生のレモンの中から(レモン汁まみれになって)現れる。そんなマジックには心が躍ります。 特に、有名なクロースアップマ

本を書くときの限界はどこにあるのか

本を書くときの限界はどこにあるのかというお話をしましょう。 結城浩のメールマガジン 2017年8月15日 Vol.281 より ※注意:以下の文章における「現在」は2017年です。  * * * 先日、筑波大学大学院の @buku_t さんによる、こんなツイートを読みました。 高校時代、特に好きなことも夢とかも無くて、本屋に行ったときに偶然数学ガールに出会い、そこから数学が好きになってここ(数学専攻 博士課程)まで来たので、結城先生にリプ送るとき未だにめっちゃ緊張す

自画自賛は恥ずかしくないか(本を書く心がけ)

質問自画自賛するのは恥ずかしくありませんか。 結城浩のメールマガジン 2019年11月12日 Vol.398 より 回答ご質問ありがとうございます。 自画自賛するのは恥ずかしいか、恥ずかしくないか。 よく考えてみました。「自分が作ったから」という理由だけで、自分の作品をほめたたえるのはいささか恥ずかしいときはありますね。 でも、自分の目で見て「うん、これはいいものだ!」と思った自分の作品をほめたたえるのはまったく恥ずかしくありません。 自分が書いた本の場合、長い時

オリジナリティと本の価値(本を書く心がけ)

結城は数学者ではありません。ですから、自分が本の中に書く数学的内容というのは、どこかの本を見て学んだ内容であることがほとんどになります。 結城が書く本の多くには、巻末に参考文献や読書案内があります。数学的内容を学びたいならば、それらの参考文献を読めばだいたい書いてあるといえます。少なくとも情報としては書かれていることになります。だとしたら、わざわざ結城が新しい本を出す意味はどこにあるのでしょうか。 結城の本を読むよりも、参考文献に書かれている本を並べて読む方がいいというの

進捗が出ないときに自分に厳しく当たってしまう心理からの脱却(仕事の心がけ)

はじめに

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執筆において「見切る」ことは大切だが難しい(本を書く心がけ)

「本を書く心がけ」のコーナーです。今回は、  「見切る」ことは大切だが難しい というお話です。 以下に書かれているのは「まとまったハウツー」や「技術的にこうすればいい」というよりは、「本を書くときにはこんなふうにもがいている」という「エモい話」です。本を書こうとしている人や、本を書いていて何かに行き詰まっている人にはヒントになるかもしれません。長い文章を書くことに関心がない人にはピンと来ない内容だと思います。 結城浩のメールマガジン 2018年2月27日 Vol.30

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難しいことを書きたくなる衝動をどう抑えるか(本を書く心がけ)

質問数学書を書くときに、難しいことを書きたくなったりすることはありませんか。 私も数学書を書いていますが、つい、想定する読者レベルを超えて難しいことを書きたくなってしまいます。 どのようにしてそのような衝動を抑えればいいと思いますか。 結城浩のメールマガジン 2018年10月2日 Vol.340 より 回答結城が書いているものは数学書といえるのかどうかわかりませんが、本の書き手という意味では同業者さんですね。ご質問ありがとうございます。 結城の場合を振り返ってみます

「魅力」について思うこと

質問世の中には「魅力的」な人がいて、自分も「魅力的」な人間になりたいと思っています。 しかし「魅力」という言葉自体が曖昧なので、そのためにはどうするべきなのだろうとも思います。 自分が魅力的だと思うものを愚直に追い求めるべきなのか。 自分としてはそこまで魅力を感じないけれど、世間一般が魅力的だと思うものを獲得しようとすべきなのか。 結城先生の思う「魅力」について教えてください。 結城浩のメールマガジン 2019年6月11日 Vol.376 より 回答ご質問ありがと