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本を書く心がけ

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結城が本を書くときに心がけていることや、手書きの執筆メモなどをお届けするマガジンです。
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#文章

断片は作品ではない(本を書く心がけ)

結城は仕事のメモを保存するためにEvernoteを使っています。自分が思いついたことを書いておいたり、参考書のスナップショットを取ったり、Webサイトのクリッピングを行ったり。Evernoteには数万個のノートがあります。 自分のEvernoteの中には「新しい本のアイディア」というノートブックがあります。そこをのぞくと、おもしろい本になりそうな設定やアイディアがぎっしり見つかります。何しろ、結城自身が長年集めてきたものですから、自分で読んで興味を引くものばかりです。 「

執筆作業と別世界への旅(本を書く心がけ)

本を執筆していると、いつのまにか別世界へ移っていることがあります。 別世界へ移るというのは比喩です。いわゆる「ゾーン」や「フロー」と呼ばれる状態に入り込むことです。そこには深い喜びがあります。これは、本を執筆することの喜びの一つかもしれません。プログラミングをしているときも似たような現象があります。 執筆に夢中になって別世界へ移る。この表現で興味深いのは「場所」にたとえることが自然に感じるという点です。 自分という存在が「こちらの世界」を離れる。つまり、現在いる部屋や家

構想中の本、あきらめるかどうかの判断(本を書く心がけ)

質問結城先生に質問です。 本を書こうとしている者です。 今まで抱いていた構想を企画書にしている途中で、自分にはその本を書く知識や経験が足りないように思えてきました。 構想自体もひとりよがりで、売れないもののように感じます。 今回は勉強を始める機会にして、企画書をあきらめようかとも思っています。 先生にもそのようなときがありましたか。 また、そのようなときをどうやって乗り越えましたか。 回答ご質問ありがとうございます。 本の構想を練って企画書にしている途中で、あ

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レビューアさんはどうやって選ぶ?(本を書く心がけ)

質問「数学ガール」シリーズの執筆では、複数のレビューアさんに原稿をチェックしてもらっているとお見受けします。ところで、そもそも最初にレビューアさんに見てもらおうと思ったのはなぜでしょう。 また、最初の人選はどうしたか、最初のコンタクトはどうしたか、などが気になります。 回答ご質問ありがとうございます。 はい、結城は本を執筆するときに、複数のレビューアさんに原稿を読んでもらっています。レビューアさんに読んでもらった本は、概算になりますが、25〜30冊くらいになります。

本を届けてください

結城が書いている「数学ガール」には「ポリアの問いかけ」がよく出てきます。これは数学者ポリアが『いかにして問題をとくか』という本に書いた「私たちのリスト」をもとにしているもので、問題を解くための手がかりとなる問いかけや指示のことです。 「定義にかえれ」 「与えられているものは何か」 「求めるものは何か」 このような問いかけは数学の問題を解く際にきわめて有益です。実際、これらは数学に限った話ではなく、考えることの本質に迫る問いかけだと思います。 「ポリアの問いかけ」は「

本を書くときの限界はどこにあるのか

本を書くときの限界はどこにあるのかというお話をしましょう。 結城浩のメールマガジン 2017年8月15日 Vol.281 より ※注意:以下の文章における「現在」は2017年です。  * * * 先日、筑波大学大学院の @buku_t さんによる、こんなツイートを読みました。 高校時代、特に好きなことも夢とかも無くて、本屋に行ったときに偶然数学ガールに出会い、そこから数学が好きになってここ(数学専攻 博士課程)まで来たので、結城先生にリプ送るとき未だにめっちゃ緊張す

自画自賛は恥ずかしくないか(本を書く心がけ)

質問自画自賛するのは恥ずかしくありませんか。 結城浩のメールマガジン 2019年11月12日 Vol.398 より 回答ご質問ありがとうございます。 自画自賛するのは恥ずかしいか、恥ずかしくないか。 よく考えてみました。「自分が作ったから」という理由だけで、自分の作品をほめたたえるのはいささか恥ずかしいときはありますね。 でも、自分の目で見て「うん、これはいいものだ!」と思った自分の作品をほめたたえるのはまったく恥ずかしくありません。 自分が書いた本の場合、長い時

進捗が出ないときに自分に厳しく当たってしまう心理からの脱却(仕事の心がけ)

はじめに

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執筆において「見切る」ことは大切だが難しい(本を書く心がけ)

「本を書く心がけ」のコーナーです。今回は、  「見切る」ことは大切だが難しい というお話です。 以下に書かれているのは「まとまったハウツー」や「技術的にこうすればいい」というよりは、「本を書くときにはこんなふうにもがいている」という「エモい話」です。本を書こうとしている人や、本を書いていて何かに行き詰まっている人にはヒントになるかもしれません。長い文章を書くことに関心がない人にはピンと来ない内容だと思います。 結城浩のメールマガジン 2018年2月27日 Vol.30

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難しいことを書きたくなる衝動をどう抑えるか(本を書く心がけ)

質問数学書を書くときに、難しいことを書きたくなったりすることはありませんか。 私も数学書を書いていますが、つい、想定する読者レベルを超えて難しいことを書きたくなってしまいます。 どのようにしてそのような衝動を抑えればいいと思いますか。 結城浩のメールマガジン 2018年10月2日 Vol.340 より 回答結城が書いているものは数学書といえるのかどうかわかりませんが、本の書き手という意味では同業者さんですね。ご質問ありがとうございます。 結城の場合を振り返ってみます

自分の作品の価値がどこにあるのかわからない(本を書く心がけ)

質問こんにちは。 クリエイタとして「自分の作品の価値」を磨きましょう、それを言葉にしましょう、と言われます。しかし、自分の作品のどこに価値があると認められているのか、正直よくわかりません。 ネット上に作品を出すと、30~50回ほど見に来ていただいてるようなので、惹かれるところがないわけではないと思います。 ただ、何を求めていらしているのかがわからなくて「磨く方向に迷う」といいますか…… 結城さんは、ご自身の作品について、読者がどんなところに価値を感じているとお考えです

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書くまでは、書かれていなかったのだ - 著者として[世界を変えた書物]展で思ったこと(本を書く心がけ)

結城浩のメールマガジン 2018年11月6日 Vol.345 より 上野の森美術館で開催された[世界を変えた書物]展に行ってきたのでそのことを書きます。本を書く身としての、ごく素朴な感想です。 [世界を変えた書物]展はK.I.T.金沢工業大学、上野の森美術館主催による「本」に関する展覧会です。東京展は2018年9月8日〜24日に開催されました。 この展覧会を、結城のまわりの人たちが「見に行きました!」と言っているのは知っていました。でも、結城自身は出不精なこともあり、仕

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いま、書こう!(本を書く心がけ)

結城は、調べ物や確認のために「数学ガール」シリーズを読み返す場合があります。その際に「現在の私にこれは書けないなあ」とよく感じます。数学の内容にせよ、彼女たちの振る舞いや心の動きにせよ、「いまの自分には書けない」と思うのです。 「書けない」といっても、それに対して「悲しい」や「悔しい」と感じているのではありません。むしろ逆です。私は「ああ、私は、そのときにしか書けないことをちゃんと本としてまとめていたのだ」という達成感を味わうのです。 文章に限った話ではありません。何かを

どうやって「自分が書きたいもの」をみんなが読みたくなるようにするのか(本を書く心がけ)

質問私は「みんなが読みたいもの」と「自分が書きたいもの」とをすりあわせるのが苦手です。 結城さんはどうやって「自分が書きたいもの」をみんなが読みたくなるようにしていますか。 ぜひ教えてください。 結城浩のメールマガジン 2018年6月26日 Vol.326 より 回答ご質問ありがとうございます。 たいへん興味深いテーマですので、じっくりお話しさせてください。 結城がどんなふうにして『数学ガール』などの物語を書いているかについては『数学ガールの誕生』という本(結城の

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