古今和歌集を読む

71

有明のつれなく見えし別れより暁(あかつき)ばかり憂きものは無し

壬生忠岑(みぶのただみね) 古今和歌集625 百人一首30 #jtanka   明け方にまだ残っている月が薄情なものに見えたあの別れの朝から、夜明け前の時分くらい気が滅入るものは無くなりました。 「有明」は「明け方になってもまだ空に残っている月」のこと。 「つれなく」はク活用の形容詞「つれなし」…

逢はずして今宵(こよひ)明けなば春の日の長くや人をつらしと思はむ

#源宗于朝臣 (みなもとのむねゆきあそん) #古今和歌集 624 #jtanka #短歌 あなたと逢わないままでこの夜が明けてしまったなら、私は(春の日のように)長いこと、あなたをつれない方だと思うでしょうか。 「逢はずして」は「逢は+ず+して」。「逢は」は動詞「逢ふ」の未然形。「ず」は打ち消しを…

寄る辺なみ身をこそ遠くへだてつれ心は君が影となりにき

読人しらず 古今和歌集619 #jtanka   あなたのところには身を寄せる場所がありませんので、私の身はあなたから遠く離れています。けれども、私の心は影となってあなたのそばに寄り添ってしまったのです。 「寄る辺なみ」は「寄る辺+な+み」。「寄る辺」は名詞で「身を寄せる場所」の意味。「な」は…

頼めつつ逢はで年経るいつはりに懲りぬ心を人は知らなむ

#凡河内躬恒 (おおしこうちのみつね) #古今和歌集 614 #jtanka   期待を持たせておきながら逢わないで何年も経つ、あの人のそんな偽りにも懲りない私の心を、あの人にこそ知ってもらいたいものです。 「頼む」は「相手に期待を持たせる」という意味の下二段活用他動詞。「頼め」はその連用形。 「…

古今和歌集仮名序(冒頭)

やまとうたは人の心を種としてよろづの言の葉とぞなれりける 和歌は、人の心を「種」として、それがさまざまな言の「葉」になったものです。 世の中にある人ことわざしげきものなれば心に思ふことを見るもの聞くものにつけて言ひ出せるなり 世の中に住む人の出来事や行事はたくさんありますので、心…

わが恋はゆくへも知らずはてもなし逢ふを限りと思ふばかりぞ

#凡河内躬恒 (おおしこうちのみつね) #古今和歌集 #611 #jtanka #恋 私の恋は、どこへ向かうのかもわかりませんし、どこへ行き着くのかもわかりません。ただ、あなたに逢っている今こそが最高だと思っているだけなのです。 「限り」はここでは「最大限」の意味。 わがこいは ゆくえもしらず は…

命にもまさりて惜しくあるものは見はてぬ夢の覚むるなりけり

壬生忠岑(みぶのただみね) 古今和歌集609 #jtanka   命以上に惜しいものといえば、大好きなあの人に会う夢を見ていたのに途中で目が覚めてしまうことだよなあ。 「見はてぬ夢」は「見はて+ぬ+夢」。「見はて」は「最後まで見る」という意味の動詞「見果つ」の未然形。「ぬ」は打ち消しを表す助動…

月影にわが身をかふるものならばつれなき人もあはれとや見む

壬生忠岑(みぶのただみね) 古今和歌集602 #jtanka   私の姿を月に変えることができるなら、冷たいあの人も「美しい」と思って --- そして「かわいそうだ」と思って --- 私のことを見てくれるだろうか。 「月影」は、ここでは「月の姿」。 「ならば」は順接の仮定条件を表す「〜ならば」の意味。「…

いつとても恋しからずはあらねども秋の夕べはあやしかりけり

読人しらず 古今和歌集546 #jtanka   どんな季節どんな時間でも人恋しくないというわけじゃないけど、秋の夕暮れとなるとむやみに人恋しくなるのは不思議なものだなあ。 「いつとても」の「とても」は、格助詞の「とて」と係助詞の「も」で、「いつといっても」「いつだって」の意味。 「あやしかり…

心がへするものにもが片恋はくるしきものと人に知らせむ

#読人しらず #古今和歌集 540 #jtanka   心が交換できるものだったらいいのにな。片思いはこんなに苦しいものなんだとあの人に知らせるのに。 「にもが」の「に」は断定を表す助動詞「なり」の連用形で「である」の意味。「もが」は「もがな」と同じ願望を表す終助詞で「ならいいのになあ」の意味。…