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古今和歌集を読む

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古今和歌集(こきんわかしゅう)から親しみやすい歌を読みます。やさしい解説付き。ちょっぴり優雅な言葉の時間をあなたに。
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#在原業平朝臣

反実仮想と恋の歌(古今和歌集を読む)

夢だとわかっていたならば……新海誠監督の映画『君の名は。』は有名ですが、企画段階での仮題が『夢と知りせば』だったと先日知りました。  思ひつつ寝(ぬ)ればや人の見えつらむ夢としりせば覚めざらましを  古今和歌集552 小野小町(おののこまち) に着想を得たのだそうです。 現代語に翻訳するなら、次のようになります。 あの人のことを思いつつ眠るので、あの人のことを夢に見てしまったのだろうか。あれがもし夢だとわかっていたなら目を覚まさかったのに。 反実仮想古文の授業でも習

世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし(在原業平朝臣)

#在原業平朝臣 (ありわらのなりひらあそん) #古今和歌集 53 #jtanka #短歌 「たえて」は「まったく」の意味。 「せば……まし」は反実仮想の表現。実際とは異なることを仮定した場合を想像して語る。 「のどけからまし」は「のどけから+まし」。「のどけから」はク活用の形容詞「のどけし」の未然形。「まし」は推量の助動詞「まし」の終止形。ここでは反実仮想を表す。 「世の中に桜がまったくない」というありえない状況を想定し、桜がなかったら「咲いたかな」「もう散るのかな」