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古今和歌集を読む

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古今和歌集(こきんわかしゅう)から親しみやすい歌を読みます。やさしい解説付き。ちょっぴり優雅な言葉の時間をあなたに。
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#結城浩

自分なりに学び、発表して楽しむための工夫(学ぶときの心がけ)

結城は2014年に「古今和歌集を読む」という活動を始めました。ときおり年単位(!)で休んだりしつつも、ぽつぽつと続けています。こういう活動はなかなか楽しくて好きです。 活動の中心はnoteで公開している「古今和歌集を読む」という無料マガジンです。 ◆「古今和歌集を読む」マガジン 古今和歌集から適当な歌を選び、古語辞典を調べ、参考書を読みます。そして現代語訳(概要)を作り、その歌に登場した古語の意味を書き、文法事項を簡単に説明します。それで一本のノートにします。 そんな

現代に通じるからこそ古典

結城はnote(ノート)で「古今和歌集を読む」というマガジンを更新しています。 このマガジンは、ぽつぽつと古今和歌集の現代語訳と文法解説をここ数年の趣味として書いているものです。記憶力が弱って暗記はできないけど、とても楽しいですね。 こういう書き物をしていると、中学高校時代に学校で古文を学んでいてよかったなあとつくづく思います。基本的な活用や係り結びなどを知っているだけでもかなり読めますし、古語辞典を引くときの「あたり」もつけやすい。まったく学んでいなかったら、こんなこと

どこへも行き着かない恋(古今和歌集を読む)

古今和歌集に、こんな歌があります。読人しらずの恋の歌です。 行く水に数かくよりもはかなきは思はぬ人を思ふなりけり 現代語に翻訳するなら「流れていく水に数を書くよりもはかないこと。それは、私のことなど思っていないあの人を思うことだなあ」とでもなるでしょうか。 ここに出てくる「思わぬ人」というのは、私のことを思ってくれない「あの人」のこと。「あの人」は、私のことを好ましく感じてくれることはあるのだろうか、きっとない。「あの人」は、恋心を私に感じてくれることはあるのだろうか、

古典文学のどこが好き?

質問以前、古典文学を読んでいらっしゃるという結城先生のツイートを拝見しました。 私も詩歌(特に明治〜昭和のもの)の類を読むことが好きです。しかし、どうして詩歌を読むことが好きなのか、私はまったく分かりません。理由は分からないのに好きという、とてもモヤモヤした状況であります。 詩歌のような、言葉による芸術作品を好む理由を伺うのは野暮という意見もあると思います。しかし、結城先生が古典文学にどのような魅力を感じられていらっしゃるのか、ということについてご意見を伺いたく、質問いた

反実仮想と恋の歌(古今和歌集を読む)

夢だとわかっていたならば……新海誠監督の映画『君の名は。』は有名ですが、企画段階での仮題が『夢と知りせば』だったと先日知りました。  思ひつつ寝(ぬ)ればや人の見えつらむ夢としりせば覚めざらましを  古今和歌集552 小野小町(おののこまち) に着想を得たのだそうです。 現代語に翻訳するなら、次のようになります。 あの人のことを思いつつ眠るので、あの人のことを夢に見てしまったのだろうか。あれがもし夢だとわかっていたなら目を覚まさかったのに。 反実仮想古文の授業でも習

恋し続けたなら必ず逢える(古今和歌集を読む)

たとえばこんな恋の歌。 種しあれば岩にも松は生ひにけり恋をし恋ひば逢はざらめやも これは古今和歌集の512番、読人しらずの恋の歌です。 現代語で大意を書くと次のようになります。 種があるので岩にも松は生えるのです。あなたを恋し続けたならば逢わないなんてことがあるでしょうか。いえ、そんなことはありません。 「恋し続けることで必ず逢える」という気持ちを詠んでいるものですね。古今和歌集が編まれたのは十世紀ですが、この歌のような気持ちは二十一世紀でもまったく色あせないのでは