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本を書く心がけ

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結城が本を書くときに心がけていることや、手書きの執筆メモなどをお届けするマガジンです。
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テキストを介した信頼(本を書く心がけ)

ここ十年ほど数学読み物を書き続け、十数冊の本を上梓しての知見の一つを書きます。それは「数学をできるだけ正しく描く努力をし、学ぶ喜びと困難を表現することができれば、数式がたくさん出てきても、安易な面白みを追求しなくても、専門家を含むたくさんの方が応援してくださる」ということです。 数学の面白さは、数学そのものの中にあります。だから、数学をきちんと書くことができるなら、わずかでもその面白さを描くことができるなら、ちゃんと読んでくださる読者はいらっしゃるし、ものすごく応援してくだ

ぜんぶ文章にしてしまえ(本を書く心がけ)

いま「グラタン」というコードネームをつけている本を書いています。別に、コードネームでカッコつけているわけではありません。ただ、まだちょっと迷いのようなものが残っているので、コードネームにしているだけです。 新刊の準備でだいぶ放置状態になっていたグラタンを再始動しています。思えば今年は「習慣の力」を生かすという目標を掲げていました。週に何回かグラタンに意識的に手を付けて進めたいと思っています。習慣の力、習慣の力。 日和らずに、文章を決めていく段階が必要あちこちの章に手を付け

結城浩『百年後の詩人』あらすじ

結城浩の新刊『百年後の詩人』のあらすじを紹介します。 その時代、詩人たちは「プログラマに適切な比喩と関数名を与える」という仕事だけをこなす毎日を過ごしていた。 あるとき、ひとりのカリスマのもとで詩人たちはついに蜂起した。「言葉は力である」と自覚していた詩人たちが取った革命の方法は、やがて予想もしなかった未来を生み出していく。 詩人たちがカリスマの助けを得て取った方法とは《語義の間隙》をねらう方法だった。「一つの単語には一つの意味」という《単一語義原則》に慣れたプログラマ

著者として、図書館について思うこと(本を書く心がけ)

本が売れる/売れないというのは、本の収入で生活している結城に直接関係しています。では著者として結城は、図書館についてどのように考えているでしょうか。 結城は、ほとんどの本はそもそも「読者に見出されていない」と思っています。図書館で読んだからもう買わない、というケースはもちろんあるでしょう。でも「自分が書いた本を読者に買ってもらう」ということを考えた場合、もっとずっと大きな要素は、  結城の本を新たな読者に見つけてもらうこと ではないかと思っています。 図書館であれ、ど