結城浩
本を書く生活が30年、著書は60冊になりました。『数学ガール』『プログラマの数学』『暗…
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良き人の物語するは(徒然草 第五十六段より)
兼好法師作 結城浩訳
品がある人が話をするときには、たくさんの人がその場にいても、たった一人に向かって話します。それなのに自然と他の人まで引き込まれて聞いてしまいます。
ところが品のない人が話をするときには、誰かに向けてではなく、皆に対してでしゃばり、自分が見てきたかのように話します。なので皆同じように爆笑し、大騒ぎになってしまいます。こういうのはたいへん騒々しいものです。
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この木、無からましかば(徒然草 第十一段)
兼好法師作 結城浩訳
神無月の頃、栗栖野というところを通って、とある山里に人を訪ねました。ずっと続く苔の細道を踏み分けていくと、庵がぽつんと立っており、落ち葉に埋もれている筧から垂れている水の音の他には、音を立てるものはまったく何もありません。閼伽棚に菊や紅葉などの枝をさりげなく置いているところを見ると、こんな寂しいところにも住んでいる人がいるのでしょう。
このような住まい方もできるのだなと、
つれづれなるままに(徒然草 序段)
兼好法師作 結城浩訳
何をするともなしに一日を過ごし、机に向かって心に浮かんでくるあれやこれやを、あてもなく書き留めてみますと、何とも不思議な気分になります。
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つれづれなるままにひくらし すずりにむかひて こころにうつりゆくよしなしごとを そこはかとなくかきつくれば あやしうこそものぐるほしけれ。